京都府は、京丹後市峰山町菅(すげ)地区において、農村地域防災減災事業として農業用ため池の改修に乗り出す。
対象の上すべ内池及び下すべ内池は谷池で、堤体が老朽化し、浸食率は5%を超え、破堤の危険性が高い。また土砂吐用のゲートが無く、ため池の貯水量全体が有効利用できていない状況。
改修計画によると、上すべ内池(堤高5・60m、天端幅2・50m、堤長55・0m)は、取水施設について斜樋1ヵ所(2孔、上樋φ100[事前放流工を兼ねる]、中樋φ300[緊急放流工を兼ねる])、底樋(土砂吐ゲート800×800×1門、底樋管ダクタイル鋳鉄管φ800[途中に止水壁(現場打ち)を設ける])、洪水吐は鉄筋コンクリート三面張水路、越流堰式(B2・30m)とする。過去に発生したパイピング周辺からの漏水再発、堤体法尻及び左岸側袖部からの漏水を踏まえ、漏水防止工法を施す。
堤体は傾斜遮水ゾーン工法で改修する。法面保護工法は上流・下流とも張ブロック(上流は制波ブロックにより波浪による浸食を防止。また笠コンより上部は芝付を行う。下流は下流直下に位置する下すべ内池の波浪高付近まで制波ブロックを設置し浸食を防止)。上下流法勾配は上流・下流とも1対2・0。嵩上高は0・75。
なお上すべ内池は平成25年度に漏水修繕工事を実施した。
下すべ内池(堤高5・21m、天端幅3・10m、堤長62・2m)は、取水施設について、斜樋、底樋は現況利用とする(落水時の操作性を考慮し簡易スルースゲート(200×200)を設ける)。土砂吐ゲートの改修を行う。
洪水吐は鉄筋コンクリート三面張水路、越流堰式(B2・00m)とする。
堤体はランダム材による浸食された堤体断面の補強を行う。法面保護工法は上流が張ブロック(制波ブロックにより波浪による浸食を防止。また笠コンより上部は芝付を行う)、下流が土羽(現況表土戻し)。上下流法勾配は上流が1対1・8、下流が1対1・6。嵩上高は0。
なお下すべ内池は平成12年度に取水施設底樋呑口の補修を実施した。
工事にあたっての環境配慮事項は、@多様な水生植物・動物が生育する環境を現状のまま保全A水生植物・動物にとって重要な水位や水質が、改修前に比べてあまり変わらないように配慮(対象はミナミメダカ、ドジョウ、シマヒレヨシノボリ)Bあらかじめ堤体の表土を剥ぎ、改修後にできた堤体に表土を張り付けることによって、在来種の生育環境を確保するよう配慮等。
コスト削減では、地盤改良工法に新技術を採用する。
事業期間は令和元年度〜4年度。総事業費は1億7020万円。費用便益比(B/C)は1・52を見込む。
京都府丹後広域振興局は、令和元年度当初までに3170万円を投じ、上すべ内池及び下すべ内池の実施設計一式、仮設道路設計一式などを実施。
令和2年度から上すべ内池の工事に着手する。事業費8000万円を充て、堤体工、取水施設、洪水吐工、仮設工一式を予定。下すべ内池は令和4年度に工事を実施する予定《表の平成31年度は令和元年度、平成32年度は令和2年度、平成33年度は令和3年度、平成34年度は令和4年度に読み替え》。
なお京丹後市は、平成29年度上すべ内池・下すべ内池計画策定業務をサンスイコンサルタント、平成29年度上すべ内池・下すべ内池測量業務を北斗エンジニアリングで実施した。
また丹後広域振興局は、令和元年12月に菅地区地質・土質調査業務、菅地区設計・測量業務をそれぞれ入札し、それぞれサンスイコンサルタントが落札し実施。