北海道建設新聞社
2020/06/02
【北海道】新千歳空港の上下一体経営を開始 北海道エアポート
北海道エアポート(本社・千歳、HAP)は、きょう1日から新千歳空港の滑走路などを含めた上下一体の経営を始める。新型コロナウイルス感染症の影響で国際線の就航はゼロ。設備投資も2、3年遅れる見通しで経営環境は厳しいが、新千歳を核に地方6空港とのネットワーク構築に力を入れる。新たな生活様式に沿った空港の在り方を模索し、巻き返しを図る。(建設・行政部 瀬端 のぞみ記者)
同社は、新千歳、旭川、稚内、釧路、函館、帯広、女満別と7空港の一括運営をことし1月15日に開始した。1日の新千歳を皮切りに10月1日に旭川、2021年3月に残る5空港で滑走路や誘導路などを含めた上下一体運営に移る。
30年間の設備投資額は約4290億円、7空港の路線数を60から142路線に、旅客数を2846万人から4584万人に増やす積極的な目標を設定。パートナーシップ協定を結んだ道や空港所在自治体7市3町と、広域観光の振興や地域経済活性化を目指し、取り組み始めた矢先に新型コロナウイルスが流行した。蒲生猛社長は「ここまで大きく影響するとは予測できなかった」と漏らす。
東京航空局新千歳空港事務所の新千歳空港航空概況によると、国内・国際線を合わせた旅客輸送実績は、1月が201万7308人(前年度比0.3%減)、2月が167万8924人(15%減)、そして、3月が59万8715人(71.3%減)、4月が17万8259人(89.6%減)。国際線の強化を考えていた蒲生社長は「一番必要なのは道内を飛んでいた路線が戻ること。新規路線の誘致はぜいたく」と話す。
7空港のテナントも269店舗のうち、一時は大半が時短営業もしくは休業に切り替えた。雇用を確保するため、テナント料減免などの対策を取っている。
新千歳以外の6空港にも約1300億円と多額の資金を充てる計画だが、新型コロナが経営に打撃を与える。「旅客ビル新設など積極的な投資は立ち止まらざるを得ない。やらない訳ではないが提案内容通りというのは厳しい」と、施設整備は2、3年遅れる見通しだ。6月中には可能な限り関係自治体を訪問。状況を説明し理解を求める。
このほど緊急事態宣言が解除された。地方には医者や技術者、教師など生活に密接した利用者がいる。地域に根ざす公共インフラの機能を果たしつつ、新しい生活様式に沿った取り組みが必要だ。
蒲生社長はテレワークの普及を受け、夏季の快適な気候や豊富な自然、食を生かし、年間の一部分を道内で過ごす4分の1定住を提案。「観光に適した7、8月は重要な時期。来年の雪まつりまで低空飛行だと危機感を覚える。計画で示したように北海道を元気にしたいという考えは何も変わらない。新たな生活様式に沿った空港の在り方を学び、北海道を選んでもらえるよう働き掛けたい」と覚悟を示す。