石川県建設業協会(小倉淳会長)は昨年9月、会員企業206社を対象に「建設業の雇用実態と経営状況に関するアンケート調査」を行い、このほど報告書をまとめた。
回答数は146社で回答率は70・9%。回答企業を業種別にみると、「土木」が102社、「建築」20社、「土木・建築」15社、「舗装」8社となり、完成工事高の区分では「1億円以上、5億円未満」が60社(41・1%)と最も多かった。就業者の職種別割合は「技術職」が49・0%、次いで「事務・営業職」、「技能職」と続いた。
就業者の年代構成をみると、「〜20代」「30代」の合計が23・8%と全国建設業の比率よりも低い一方、「50代」「60代〜」の合計が48・0%と全国よりも高く、就業者の高齢化が進んでいることから、若者世代の入職は喫緊の課題。
採用予定数に対する充足率は48・2%で、このうち、新規学卒者の充足率は36・4%と厳しい状況。採用予定人数の多い「技術職」の充足率は37・1%、地区別では「金沢地区」の63・0%に対し、「加賀地区」19・3%、「能登地区」19・2%と地区間で大きな差があった。
従業員の過不足では、「不足」「やや不足」の合計は、「技術職」が80・9%、次いで「技能職」62・3%、「事務・営業職」24・7%となり、非常に不足していることが分かった。
外国人労働者の受け入れでは、「現在受け入れている」「積極的に受け入れたい」「できれば受け入れたい」の合計が26・1%だった一方、「受け入れたくない」が62・2%で、その理由としては「日本語でのコミュニケーションに不安がある」「雇い入れるのであれば、日本人が望ましい」「文化の違いによるトラブルが起きないか不安」が上位を占めた。
女性技術者の活躍では、「積極的に取り組んでいる」「ある程度取り組んでいる」「これから取り組んでいく予定」の合計が63・0%と6割超の企業が前向きに捉えており、完工高別では規模の大きい順に、地区別では金沢地区で積極的な姿勢がうかがえた。
常用雇用者である現場職員(技術者・技能者)の賃金では、「基本給を引き上げた」「一時金のみ引き上げた」「基本給・一時金を引き上げた」の合計が84・2%、「引き上げを行っていない」が15・8%で、全国建設業協会(全建)の全国調査もほぼ同様の結果だったという。
契約変更への柔軟な対応/現場の実情に即した積算を
建設現場における働き方改革については、就業規則に定める年間休日数で、「90日未満」が2018年度の34・2%から2020年度(予定)の19・9%と減少傾向にある一方、「100日以上」は18年度の36・9%から20年度では50・7%と半数を超える見通し。いずれの地区でも年間休日数は増加しているものの、20年度では「金沢地区」の106・5日に対し、「能登地区」は95・9日と10日以上の差が見られる。
建設現場の休日拡大に向けて、既に実施済みの取り組みとしては、「土曜・日曜の完全週休2日の導入」および「祝日の原則閉所」が27・6%、今後実施する予定では「新たに特定土曜日の一斉閉所」が39・1%、次いで「土曜・日曜の完全週休2日の導入」が32・6%となっている。
完全週休2日制の実現で期待できるのは「新卒者などの確保」「建設業のイメージアップ」が多く、そのために発注者に望むこととしては「週休2日を前提とした経費計上、工期設定」などが挙げられた。
18年度に完成した公共工事(3179件)の採算性をみると、2936件(92・4%)で利益を確保したが、243件(7・6%)で赤字が発生している。件数の多い順に「県内の市・町」111件、「石川県(土木)」67件、「同県(農林水産)」51件、「北陸地方整備局(土木)」8件、「同県(建築)」6件となった。赤字発生の率では「同県(農林水産)」が34・0%と高く、地区別では「能登地区」で赤字発生の工事が多くみられた。
その理由では「増額変更がなかった(不十分だった)」が最も多く、発注者に望むことも「契約変更への柔軟な対応」「適切な積算の実現」が多いことから、発注者側が現場の実情に見合った積算を行うことや、契約時に予定されていなかった作業などを請負金額に反映することが必要としている。
「休日月1プラス運動」など/魅力ある産業を構築へ
同協会の山岸勇専務理事はアンケート調査結果を踏まえ、「今回の調査は新型コロナウイルスの感染拡大前に行ったものだが、今後も毎年継続的にアンケート調査を実施していきたい。協会内では女性部会の設立準備など、女性がより働きやすい環境づくりを構築するほか、「休日月1プラス運動」を一層推進し、新3K(給料が良く、休暇が取れ、希望が持てる)の魅力ある産業へ意識を高める手立てにしていきたい」としている。