国土交通省関東地方整備局は、2019年の台風19号で被災した多摩川を対象とした緊急治水対策プロジェクトを20年度から本格化する。護岸施設などの災害復旧を推進するとともに、同等の台風が来ても再度の被害を発生させないよう、河道掘削(24年度まで、合計約198万立方b)をはじめとした流下能力の改善整備にも着手する。
台風19号の襲来時、多摩川は人口が密集した都心部の東京都調布市から大田区にかけての区間で氾濫危険水位を大幅に超過した。これを受けて関東地整は、24年度までに全体事業費約191億円を投じる緊急治水対策を1月に策定。台風で被災した箇所の復旧に約28億円、河川施設の能力強化に約163億円を充てる計画を示していた。
19年度補正予算と20年度当初予算を合わせた直轄事業費には約36億円を配分。被災した低水護岸の整備を中心として6月までに復旧工事13件を発注し、台風シーズンが本格化するまでに最低限の復旧を終える。
20年度は河道掘削にも着手する。河道をならし、洪水の流下能力を改善する整正工事4件と、浚渫を伴う河道掘削工事3件を第2四半期までに順次、発注する。上流部はバックホウによる掘削が中心となる。
掘削土は、台風で溢水した世田谷区玉川地区の堤防補強整備に活用する。
さらに、稲城市付近で多摩川を横断し洪水の流下を阻害している大丸用水堰について、河床を深くし、水位を低下させる改築にも着手する。
緊急治水対策ではこの他、東京都や神奈川県、沿川自治体と連携して内水対策も推進する。近隣市区に雨水浸透施設や透水性舗装の整備を促す他、雨水浸透ますや雨水貯留タンク設置に対して助成金を交付。市区から民間などの開発に対し、流出抑制施設の設置を指導する。
さらに、樋管などの排水施設について沿川市がフラップゲート化を検討。水位計の増設や河川監視カメラの設置なども併せて実施し、緊急時に遠隔でゲートを操作するためのハード整備を行う。
提供;建通新聞社