明治期に入って焼失した、城内最大の建築物である「二の丸御殿」(建坪約3200坪=約1万600平方b)の復元の議論を巡っては、その可能性を延べ5回に渡り探ってきた「金沢城二の丸御殿調査検討委員会」の藤井讓治委員長(京都大学名誉教授・県立歴史博物館長)がこのほど、谷本知事に対して、各史・資料を検証した結果、御殿のうち歴代藩主が藩政を司る儀礼の場「表向」については江戸後期を通じてあまり変化がないことから「復元整備を進めることは可能である」と報告した。
一方、江戸後期の藩主交代の際に建物の改変が繰り返された「御居間廻り」(おいままわり、藩主の日常生活の場)および「奥向」(おくむき、城に居住する女性たちの生活の場)については、復元する場合の時代設定をいつに定めるのか、といった課題があることから「二の丸御殿全体を考える上で、引き続き調査検討を進める必要がある」と指摘。さらに「(1800坪の)表向を一度に復元することは財政的、資材、技術面からさまざまな困難がある。段階的な整備も選択肢となる」などとアドバイスすると、知事も理解を示していた。
この日の記者会見で、二の丸御殿復元事業の進め方について尋ねられた知事は、「例えば銅板葺きとか、鉛瓦とか、屋根の種類で区切るか、内装材料がどのように調達できるのかといった考え方がある」としたほか、「御殿全体を完成させるには10年以上はかかる。完成した部分からいち早くお見せしたい」とし、その場合、史・資料の裏付けがしっかりしている正面玄関が有力とした。
正面玄関(式台)に関しては、金沢城二の丸御殿調査検討委員会の議論において、金沢市玉川図書館所蔵の詳細な立面図「前田家表御式台絵図」と石川県立図書館所蔵の平面図「金沢城二之御丸三歩碁図B」を比較して、柱間装置を含めて相違がないことが確認されていた。
「(金沢城二の丸御殿の)表向(おもてむき)の中でも、正面玄関(式台)は立面図がはっきりしており、内装もわかっている。正面玄関を優先的に復元していくのでは」―。谷本正憲知事は19日に開かれた20年度実質当初予算案に関する記者会見で、同予算案に基本方針策定費および遺構確認調査費を盛り込んだ二の丸御殿復元事業についてこう言及した。