明治期に入って焼失した金沢城二の丸御殿の復元の可能性を延べ5回に渡り探ってきた石川県の「金沢城二の丸御殿調査検討委員会」の藤井讓治委員長(京都大学名誉教授・県立歴史博物館長)は4日、県庁に谷本正憲知事を訪ね、金沢市立玉川図書館「加越能文庫」で発見された二の丸御殿に関する仕様書などを検証した結果、二の丸御殿のうち「表向」(おもてむき)と呼ばれるエリアについて「復元整備を進めることは可能である」と報告した。谷本知事はこれを受け、現在編成中の新年度当初予算において表向の復元整備基本方針を含めた調査検討費を計上する考えを示した。
城内最大の建築物、二の丸御殿(建坪約3200坪=約1万600平方メートル)は、「表向」(藩主が藩政を司る儀礼の場)、「御居間廻り」(おいままわり、藩主の日常生活の場)、「奥向」(おくむき、城に居住する女性たちの生活の場)の3エリアで構成されていた。このうち「表向」に関しては、委員会の議論の中でも「江戸後期を通じてあまり変化がなく、外観立面図が残るなど復元整備の可能性が大きい」とされていた。
この日、藤井委員長は表向の復元整備は可能としながらも「表向を一度に復元することは財政的、資材、技術面からさまざまな困難がある。段階的な整備も選択肢となる」としたほか、江戸後期の藩主交代の際に建物の改変が繰り返された「御居間廻り」と「奥向」については「二の丸御殿全体を考える上で、引き続き調査検討を進める必要がある」とした。この助言に対して谷本知事は「表向だけで1800坪を占めるので一挙に復元するのは財政的に厳しい。段階的な整備を検討したい」などと応じていた。