神奈川県県土整備局は県営住宅建て替えへのPPP/PFI手法導入に際し、維持管理・運営を含まない「BT方式」を採用する方針だ。事業者は設計・建設と余剰地活用、入居者の移転調整などを担うことになる。1月30日に開催した「神奈川県県営住宅建替えPPP/PFIプラットフォーム第1回セミナー」で明らかにした。PPP/PFI手法の導入を検討している上溝(相模原市中央区)、追浜第一(横須賀市)の両団地については3月中に実施の可否を決定するとした。事業を実施する場合は2020年度に入札公告などを行う予定。
セミナーでは庄司博之建築住宅部長が県営住宅の建て替え方針を説明。BT方式採用の理由として、すべての県営住宅で指定管理者が維持管理・運営を担っていることを挙げた。このため、「県営住宅型BT方式」の事業範囲は設計建設と所有権移転となる。庄司部長はまた、建て替えの進め方について、今後30年間、1年当たり900戸ペースとすることで平準化を図るとした。すべての県営住宅でPPP/PFI手法を導入するのではなく、「民間事業者のニーズがある場合は積極的に導入していく」との考えを示した。
この他、公営住宅PPP/PFIの事例を紹介した地域経済研究所の井上浩一代表取締役はBT方式で実現するVFM(バリュー・フォー・マネー)について、ほぼ設計・建築費の低減分とした。参画事業者が単独(1社)の場合は、実現VFMが低い傾向にあることも説明した。
県がPPP/PFI手法の導入検討を進める団地のうち、上溝(相模原市中央区光が丘3ノ1他、敷地面積約8万4840平方b)の既存規模は鉄筋コンクリート造2階建て(一部5階建て)143棟992戸。入居率は7割程度。もう一方の追浜第一(横須賀市追浜本町1ノ119、敷地面積約7837平方b)は、鉄筋コンクリート造4階建て6棟176戸の住宅が既存する。入居率は2割程度。
両団地とも入居者の高齢化、建物の老朽化が進み、地域のまちづくりを踏まえたコミュニティーの促進や、余剰地の活用が課題となっている。
現在、事業効果などに関する調査を進めており、その結果を受けて、事業実施の可否を判断する考え。実施可能とした場合には、20年度前半に実施方針と要求水準書を検討し、後半に実施方針公表、入札公告と手続きを進める。翌21年度の前半には提案審査を行い、事業者の選定、契約につなげる。事業着手は同年度後半の予定。
〇事業者向けセミナーに130人超が参加
プラットフォームは、PPP/PFI手法を積極的に導入し、地元企業が参画しやすい事業とするために設立。神奈川県建設業協会、神奈川県空調衛生工業会、神奈川県電業協会、神奈川県建築士事務所協会の4団体と、国土交通省PPP協定パートナーである横浜銀行が構成員として名を連ねる。第1回セミナーには地元企業の他、ハウスメーカー、金融機関など130人超が参加。20年度前半に第2回セミナーを開く予定。
提供:建通新聞社