金沢市は、このほど開かれた金沢歌劇座あり方検討懇話会の最終会合で、歌劇座の今後の方向性を示した。現施設は老朽化や機能不足が指摘され、建て替える際には本格的なオペラ上演も可能なハイレベルなホールを目指す方針。しかし、オペラ上演には現施設を超える高さを必要とするものの、現在地には高さ制限があるため、今後の議論においては「地下化」が争点の一つになりそうだ。
県内最大規模の1919席を収容する金沢歌劇座(下本多町)は1962(昭和37)年に竣工。施設はSRC造地下1階、地上5階建て延べ1万777・92平方メートル。故谷口吉郎氏監修のもと、日建設計工務が設計した。
建物の高さは21・1メートル。現在地の用途地域「近隣商業」では、建物の高さを18メートルまでに規制しており、今後建て替えを行う場合は制限以下でしか行えないルールとなっている。
市は新たな施設が有するべき機能として、「質の高い芸術に触れる場」「芸術文化活動を発表・披露する場」「交流する場」の3つを掲げる。このうち、世界的な演奏者や楽団など質の高い芸術に触れる場として、オペラ上演に適した仕様を検討する方針を示す。これまでの会合でも、委員から「オペラ公演が可能な施設なら、コンサートや演劇などにも対応できる」といった声が出ていた。
会合では、全国で近年整備されたオペラ上演も可能な大型ホールのデータが紹介され、舞台床面から天井までの高さが30メートル〜50メートルの施設が大半を占めることが分かった。現在の歌劇座はその高さが約19メートルしかなく、さらに高さ制限で低くなれば、地上部だけでは対応しきれない状況となる。
地下化に関し、市は「高さ規制を変更するのは難しく、工事費などのコスト面を考えても厳しい」と否定的なコメント。ホール関係者は「楽器などの搬入が不便になる。災害時の対応も考えなければならない」など課題が多いとする見方だ。
懇話会は年度内に報告書を山野之義市長に提出する。市は建て替えにあたっては高さに加え、敷地の問題、100億円を超えるとも言われる建設費の確保といったことも課題になるとし、来年度も引き続き検討する考えを示している。