建設新聞社
2020/01/20
【東北】復興係数の継続を表明/人口10万人以上の都市でICT・週休2日証明書/復興加速化会議 (国交省)
国土交通省は18日、復旧・復興事業の円滑な施工対策の在り方などを話し合う復興加速化会議を仙台市内で開いた。この中で国交省の赤羽一嘉大臣は、被災3県に適用している復興係数を2020年度も継続することを表明。東北地方整備局が展開する「東北復興働き方・人づくり改革プロジェクト」をさらに深化・拡大するため、20年度に人口10万人以上の都市でICT土工活用証明書・週休2日実施証明書を発行することや、国、県・政令市、人口10万人以上の都市で平準化率の目標を設定することなどを新たに打ち出した。
復興加速化会議は、復旧・復興事業の施工確保対策を検討する場として2013年3月に初会合を開催。それ以降、国交相出席のもとで会合を開き、復興係数による間接工事費の補正、発注見通しの統合化、公共工事設計労務単価などの適用前倒しといった対策を次々と打ち出してきた。
10回目を迎えた今回は、国交省から赤羽大臣のほか、和田政宗大臣政務官、山田邦博技監、東川直正大臣官房技術審議官、住田浩典大臣官房官庁営繕部長、佐藤克英東北地方整備局長らが出席。被災自治体からは達増拓也岩手県知事、村井嘉浩宮城県知事、内堀雅雄福島県知事、郡和子仙台市長らが顔をそろえた。
赤羽大臣は冒頭、「東日本大震災から8年10カ月が経過する中、皆さんの尽力で復興が着実に進んでいることに敬意を表する。ただ、いまだに5万人近い方々が不自由な避難生活を強いられており、今後も被災者が立ち上がれるよう寄り添いながら課題解決に取り組んでいく。20年度は復興・創生期間の総仕上げの年となる。忌憚(きたん)のない意見を聞かせてほしい」と呼び掛けた。
被災自治体からは「久慈港、宮古港の防波堤の着実な整備や復興道路の全線開通は、岩手県の復興に欠かすことができない。今後も確実な予算措置と復興係数などの継続をお願いしたい」(岩手県・達増知事)、「台風19号の復旧が本格すると入札不調の増加が懸念される。復興係数などの施工確保対策を継続し、必要な予算を確実に措置してほしい」(宮城県・村井知事)、「復興を成し遂げるまで必要な予算の確実な措置や復興係数の継続が不可欠。基幹インフラや物流拠点の整備促進も求められる」(福島県・内堀知事)、「復旧・復興を円滑・着実に進めるためにも、復興係数などの施工確保対策は労働者確保や資材調達の面から大変有効であり、ぜひ継続してほしい。安定的な予算確保も必要」(仙台市・郡市長)などと、施工確保対策の継続や復興完遂に必要な予算の確保を求める声が相次いだ。
これを受けて赤羽大臣は「現場からの貴重な意見や要望を頂いた。台風19号の復旧が資材高騰、技術者不足を招き入札不調が増加するという懸念は共通しており、これを回避しなければならない。万全を期すために要望を受け止め、来年度も復興係数を継続する」と明言。また「建設業界は人手不足と高齢化が大きな課題だ。自治体と連携し新たな対策を加えながら『東北復興働き方・人づくり改革プロジェクト』を推進していく」との方針を示した。
具体的な取り組みとしては、ICT土工活用証明書・週休2日実施証明書の発行を20年度から東北の10万人以上の都市(16団体)に拡大する。各自治体が発行した証明書は、東北整備局発注案件の次回入札時に総合評価で加点する構えだ。また、週休2日工事の発注者指定型をこれまでの本官工事から分任管工事の一部まで広げる。
ICT普及に向けては、▽3次元設計データ作成▽ICT建設機械による施工▽3次元出来形管理等の施工管理―のうち2項目以上を実施すれば評価し、専門家からのアドバイスも受けられる「簡易チャレンジ型ICT」(仮称)を創設する。
施工時期の平準化を進めるため、国、県・政令市、人口10万人以上の市で目標値を設定。国、県・政令市は平準化率(件数)0・8以上、10万人以上の都市は0・7以上、その他の全市町村は0・1アップ(0・6が上限値)を目標とする。
本年度から東北6県で実施している「統一土曜一斉現場閉所」は20年度も継続するとともに、日数拡大などを想定。生産性向上の観点からは、国と東北の全市町村で工事書類を標準化できるよう調整を進める。担い手育成・確保に向けては、優良工事表彰に「地域の守り手枠(経常維持工事)」(仮称)を創設することで、維持工事に対する意欲を高めていく。
震災伝承では、震災伝承施設などをネットワーク化する「3.11伝承ロード」の形成をはじめとした取り組みを産学官民が連携して拡充していく。
働き方改革、生産性向上に注力
建設関係団体が意見表明
復興加速化会議には、▽東北建設業協会連合会▽日本建設業連合会東北支部▽全国生コンクリート工業組合連合会東北地区本部▽宮城県地域型復興住宅推進協議会▽建設コンサルタンツ協会東北支部▽日本補償コンサルタント協会東北支部▽建設産業専門団体東北地区連合会―など建設関係団体も参加し、赤羽国交相が表明した復興係数の継続に謝意を示した上で、早期復興に加え、働き方改革、生産性向上などを積極的に推進していく姿勢を示した。
東北建協連の千葉嘉春会長は「復興・創生期間内に復旧・復興工事が全て完成するわけではない。台風19号でも甚大な被害が出ており、特例措置の継続をお願いしたい。また、東北整備局の通常予算は復興分を除くと激減しており、これを元に戻してほしい。働き方改革、生産性向上は喫緊の課題であり、われわれは新たな3K(給与・休暇・希望)を目指してまい進していく」などと述べた。
日建連東北の平田尚久支部長は「週休2日に向けては本年度末までに4週休2日6閉所以上の実現を目指しており、さらに生産性向上に努めていく。建設キャリアアップシステムは事業者登録、現場登録の割合が9割近くに達しているが、技能者登録は2次下請け、高齢層を中心として思うように進んでいない。引き続き次世代の担い手確保に注力していく」と強調した。 全生連東北の野剛副本部長は「生コン業界は供給能力の増強などを通じ、一丸となって復旧・復興を支えてきた。復旧・復興工事は収束に向かいつつあるが、沿岸部などの需要は依然として高い状態にある。引き続き供給不足が生じないよう万全な出荷体制を整え、一致団結して供給責任を果たしていく」との姿勢を提示。宮城地域型復興住宅推進協の橋清秋会長は「健康・省エネ住宅の提案、住宅生産者のマッチングなどを通じて、被災者の再建を支援してきた。全ての被災者の住宅再建を実現するとともに、次の大規模災害に備える活動も不可欠だ」などと話した。
最後に赤羽国交相は震災伝承をめぐり「大震災の経験と教訓を風化させてはならない。次世代に伝えていくため、産官学民連携による『3.11伝承ロード』は重要な取り組みだ。復興の総仕上げとともに、一日も早い真の復興の実現に向けて取り組んでいきたい」との決意を示し、全体を総括した。
提供:建設新聞社