京都市長の諮問を受け、京都市環境影響評価審査会が15日、京都市内で開催。独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(理事長北村隆志氏、神奈川県横浜市中区)が計画する北陸新幹線(敦賀・新大阪間)に係る環境影響評価(環境アセスメント)方法書について審議した。
アセス方法書の説明では、機構の担当者とともに、コンサルとしてパシフィックコンサルタンツの担当者が出席した。
委員からは、大深度地下の公共的使用に関する特措法の活用や、ルートの絞り込みなどについて意見があり、機構は「大深度地下を活用すると費用も高くなり、既存駅への結節も長くなる。一つの選択肢として検討している」と回答した。
ルート絞り込みについては「この幅の中で様々な可能性を検討している状況。京都駅付近については、交通結節機能を持たせるため、既存の交通ネットワークへの乗り継ぎ、利便性を検討している。駅へのアプローチの仕方、入り方も幅を持った形で検討している」などと回答し、具体的なルートについては「準備書の段階で示したい」と方針を示した。
機構は、方法書の縦覧を昨年11月26日から12月25日まで実施。12月3日から住民説明会を京都府内で計33回(うち京都市内16回)開催した。
方法書への一般意見の募集を1月8日に終了。今後、機構は一般意見概要書を京都府、京都市他関係市町に送付する。京都府知事から方法書に対する意見照会を行う。
2月に市環境影響評価審査会で審議し、2月中に答申案をとりまとめる予定。3月上旬頃までに府知事に対する市長意見を提出し、市長意見の告示、縦覧を行う。
その後、一般意見・事業者見解に配慮し、府環境影響評価専門委の意見を聴いた上で、府が知事意見を作成し、4月以降に知事意見の提出を予定。
なお昨年12月25日開催の府環境影響評価専門委員会において、機構は「全てが地下になるかはこれから検討していく。短い明かり区間を設ける。全長約140qのうち8割程度はトンネルになる」と方向性を示し、「準備書の段階では、より絞り込んだルートを示したい」と見通しを示した。
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北陸新幹線の敦賀駅・新大阪駅間の路線(複線)は、敦賀駅を起点、新大阪駅を終点とし延長は約140q(方法書の段階では概略ルート帯のため、幅は4q〜12q)。動力は交流2万5000ボルト。最高設計速度は時速260q。
停車場(駅)は福井県2ヵ所、京都府2ヵ所、大阪府1ヵ所の計5ヵ所で、敦賀駅、新大阪駅のほか、小浜市(東小浜)付近、京都駅、京田辺市(松井山手)付近に設置する計画。車両基地は1ヵ所。
事業実施区域は、敦賀駅〜小浜市(東小浜)付近までは「明り区間又はトンネル区間(山岳部)」、小浜市(東小浜)付近から南〜京都駅付近までは「トンネル区間(山岳部)」、京都駅付近は「トンネル区間(都市部)」、京都駅付近から南〜京田辺市(松井山手)付近までは「明り区間又はトンネル区間(都市部)」、京田辺市(松井山手)付近から南〜新大阪駅は「トンネル区間(山岳部及び都市部)」。
事業実施区域を含む市町は、京都府内では南丹市、京都市、向日市、長岡京市、宇治市、久御山町、八幡市、城陽市、京田辺市の8市1町。なお京都市は北区、上京区、左京区、中京区、東山区、下京区、南区、右京区、伏見区、山科区、西京区の全11行政区が含まれる。
駅位置の選定の考え方によると、京都駅については、周辺が高度に市街化が進んでいるため、地下駅とする。また東海道新幹線との接続や、在来線や地下鉄烏丸線、路線バス、観光バスとの乗り継ぎを考慮し、現京都駅付近の地下に設置する。
京田辺市(松井山手)付近は、概略のルート選定の考え方の通り、高速走行を可能とするためになるべく直線となるようにし、乗り継ぎを考慮した位置で計画する。
概略のルート選定については、新幹線事業の特徴として▽駅の設置位置が事業計画上のコントロールポイントとなる▽高速走行を可能とするためにルートがなるべく直線となるよう計画する▽主要な線形条件として、最小曲線半径は4000m(在来の鉄道は400m程度まで)、最急勾配は15‰(パーミル/パーミルは水平距離1000m当たりの高低で、15パーミルは水平方向に1000m進むと15mの高低となる)。
京都府内のルート概要によると、福井県境から京都駅へ至るルートは、京都丹波高原国定公園第1種特別地域及び第2種特別地域、琵琶湖国定公園第2種特別地域を回避したルートとし、主にトンネルで通過する。
主要な河川と交差する場合は、橋梁又はトンネルで、できる限り短い距離で通過する。
トンネル施工のために、立坑、斜坑及び施工ヤードが必要となる。立坑等は市街地化、住宅地化が進展している地域への設置はできる限り回避する。
京都駅付近は、京都市中心市街地は回避し、可能な限り道路等公共用地の下の活用を考慮し、必要に応じて大深度地下の公共的使用に関する特措法の活用も検討を行う。
京都駅から大阪府境へ至るルートは、伏見酒造エリアを回避した区域を選定し、なるべく直線となるよう考慮しつつ、松井山手付近を経て、大阪府境に至るルートとする。
高架橋・橋梁は幅約12m、地上駅は幅約20m(2面2線の場合)、地下駅は幅約25m(2面2線の場合)、トンネルは山岳トンネルが幅約10m(複線断面の場合)、都市トンネルが幅約10〜13m(複線断面の場合)。
都市トンネルにおいて、約5〜10q間隔で幅約10〜30m程度の立坑を設置することを想定。立坑を換気施設として用いる場合は立坑の地上部に建屋を設ける。
山岳トンネルにおいて、約4〜7q間隔で幅約6m程度の斜坑を設置することを想定している。
各構造物の施工順序によると、嵩上式(高架橋・橋梁)は、高架橋を支える場所打ち杭などの基礎を施工し、土留めを設置するなどして土砂を掘削し、躯体コンクリートを打設することにより施工する。工事の実施にあたり、工事施工ヤード及び必要に応じて工事用道路を設ける。
地上駅は、高架橋を支える場所打ち杭などの基礎を施工し、土留めを設置するなどして土砂を掘削し、躯体コンクリートを打設し、駅舎はを構築することにより施工する。工事の実施にあたり、工事施工ヤード及び必要に応じて工事用道路を設ける。
地下駅を開削工法により施工する場合は、まず土留めを設置し、土留めの変位抑制のための支保工や路面覆工を施工しながら掘削を行う。次に地下駅躯体を構築し、土留め頂部を撤去し、土砂等で埋め戻す。工事の実施にあたり、工事施工ヤード及び必要に応じて工事用道路を設ける。また必要に応じて他の工法も検討する。
山岳トンネル(斜坑含む)をNATM工法で施工する場合は、機械や発破により掘削を行った後に、支保工、吹付コンクリート、ロックボルト、インバートコンクリート、覆工コンクリートを順に施工する。坑口部からの施工を開始することを基本とするが、山岳トンネル延長が長い場合には、トンネル本坑の途中箇所に斜坑を設け、斜坑部からトンネル本坑へ掘り進めた後に、本坑を掘り進める。工事の実施にあたり、必要に応じて工事用道路及び坑口部に工事施工ヤードを設ける。
都市トンネル(立坑含む)をシールド工法で施工する場合は、立坑を構築した後、立坑から発進したシールド機が、掘り進んだ部分にセグメント(鋼製、鉄筋コンクリート製の筒)を設置しながら到達立坑に達する。工事中の発進立坑は、セグメントの搬入や掘削土砂の搬出に用い、地上部にはセグメント置き場や掘削土砂の処理施設を設置する。工事後には、立坑及び立坑の地上部に換気施設を設ける場合がある。
ルートや付帯施設の位置・規模等は今後計画を具体化していく。