歴史的資産である金澤町家をはじめとする木造建築を大切にする金沢市は、歴史都市としての個性にさらに磨きをかけるべく、様々な形で木造や木材を取り入れた「木質都市」を目指す方針を打ち出した。来年度早々にも有識者で組織する諮問会議を立ち上げ、方向性や課題、木質都市の創出に向けた具体策の検討に着手する。
市はこれまでの都市景観づくりにおいて、金沢の伝統的な街並みの色であった木色(もくじき)として、落ち着きがあり周辺景観と調和したベージュやグレー色を採用するなど、統一感のある外観の色彩形成を中心に取り組んできた。今後は街並みの外観的な色合いだけでなく、構成する建物などの質感についても、金沢の建築構造の基本である木にこだわった都市の木造化を目指すという。
市がイメージする木質都市は、貴重な財産である金澤町家をはじめとする既存の木造建築を引き続き保存・活用し、新築ビルなどの建物の構造から外壁まで木材の活用を進め、ベンチなど様々な場所にも木を用いた都市空間としている。
しかし一方で、木は燃えない都市の構築を目指してきた国の流れに反する面もあり、耐火性や耐久性など解決すべき課題も多い。都市として木造化を進める動きは全国的にも例がなく、それ故に市は「都市の個性を大切にする先駆的な取り組みで、持続可能な歴史都市を実現するために必要な価値ある挑戦」(都市計画課)と意欲を見せ、金沢から木造建築の未来を発信したいともする。
諮問会議については「(仮称)木質都市を創出する金澤会議」とし、経済界をはじめ、都市計画や建築構造、建築防災、SDGsなどの学識者計6、7人で構成する。座長には水野一郎谷口吉郎・吉生記念金沢建築館長が就く予定だ。
会議では、市内の木造建築に関する現状の再評価、技術水準や法的規制も踏まえた課題の整理などを行い、計3回程度の会合で方向性や実現に向けた施策をまとめる。