日本建築家協会(JIA)北陸支部福井地域会の毎年恒例「建築文化講演会」は14日、福井市下馬の福井市美術館で行われ、市民ギャラリーは熱心な聴講者約50人で埋まった。
講師は建築家で、東環境・建築研究所(東京都渋谷区)の東利恵代表が務め、演題を「居場所の建築」とし話しかけた。氏は、ここ十数年携わる星のや軽井沢など星野リゾートの滞在型宿泊施設を紹介し、建築上の考え方や、工夫点などを披露した。くつろぎに関し「ランドスケープの専門家も交え、よく議論をし、地域ごとの地形を生かした建築を」と心掛け。居場所についても「一日中(24時間)いる場所を追求。周遊型で転々とし、食事して寝るだけの場とは違う」と強調した。
会場の質問にも応え、当面の目標は「リョカン(旅館)という言葉が海外でも通じるよう、進化した新しい日本の旅館づくりを」と抱負を示した。講演に先立ち、同館内で行われる会員作品展も見学した。なお今講師は初回の内井昭蔵氏から数え39人目。
心身の癒やしへ名コンビ
JIA北陸支部福井地域会の出田吏市会長がまず、主催者を代表して挨拶し「父親で建築家の東孝光さん(名作塔の家)を思い出す」とも感慨を込め、今回の講演内容に期待した。
また北陸支部の高屋利行支部長が最後に挨拶し「(講師指摘の)一日中いる居場所とは、1泊では無理でも、2泊するとゆっくりと心身を癒すことができる。そんな意味(滞在型の宿泊施設)だと改めて気づかせて頂いた。スリランカの建築家でジェフリー・バワさんも思い出した。まさに星野さんと、東さんとのコンビネーションの賜物。作詞家の阿久悠さんと、作曲家の都倉俊一さんのヒットを生み出すような感じでは」などと感想を述べ、締めくくった。
あずま・りえ 60歳 大阪府生まれ 日本女子大学卒業 東京大学大学院・コーネル大学大学院修了 86年東環境・建築研究所代表取締役 主な作品は星のや軽井沢、星のや富士、星のや東京、シーパルピア女川など 著書に「塔の家白書」など