愛知県と名古屋市は11月15日、アジア競技大会選手村後利用基本構想有識者懇談会を開き、大会後の選手村の活用方法について、基本構想の素案を提示した。土地利用イメージは、環状線と東海通沿いを「にぎわいゾーン」とし、中央部に憩いゾーン、南西側に住まい・学びゾーンを配置することとした。基本構想は、2020年初めにもパブリックコメント手続きに入り、本年度内にも基本構想として取りまとめる見通しだ。同基本構想の概要が見えてきたことで、選手村後利用と選手村整備事業者の募集手続き開始に向けた準備が整ってきたことになる。
開発コンセプトは「安心と交流を生み出す次世代拠点」。開発コンセプトとして目指すべきまちの姿(五つの夢)を設定し、「夢を実現させるまちづくり」を目指す方針だ。五つの夢は▽「ACTIVE」スポーツにより健康に暮らし、元気になるまち▽「ASAIA」多様な人々が国内外から集い、グローバルに成長できるまち▽「GREEN」憩いや集いの場があり、エコな暮らしが実現するまち▽「FUN」にぎわいがうまれ都市の魅力が高まり、国内外に誇れる楽しいまち▽「FUTURE」未来を身近に感じ、イノベーションが創出されるまち―。
五つの夢を実現させるための導入機能には「にぎわい」「学び」「憩い」「住まい」を設定した。にぎわい空間は商業施設や体育館・アリーナ、場外馬券売り場、学びは学校施設、留学生宿舎、研修・合宿施設、憩いは公園、広場・緑地、ジョギングコース・ウオーキングコース、住まいに集合住宅、高齢者向け住宅といった施設の導入が期待される。
機能ゾーニング案(土地利用イメージ)は、環状線と東海通沿いは「にぎわいゾーン」、地区中心部は「憩いゾーン」、幹線道路から離れたエリアには「学び・住まいゾーン」を配置する案を提示した。
土地利用イメージ案に対し、名古屋大学大学院環境学研究科の小松尚准教授は「全体20fの敷地を順次整備していく計画の中で、土地利用全体のトータルデザインの視点が不足している」と指摘。全体のコンセプトを提示する必要性を述べた。また開発コンセプトの次世代≠フ示す意味が不明確との指摘を、学校法人梅村学園常任理事で中京大学経済学部客員教授の内田俊宏氏と名城大学理工学部の松本幸正教授が提示した。松本教授はまた、安心を生み出すための安全の視点から、敷地内を通る骨格道路をあくまで「地区内のアクセス道路」とし、通過交通のう回路として利用できないようにする必要性を語った。名古屋商工会議所は、外国人学級の併設といった外国人教育専門校の充実といった視点があってもいいと指摘。中部経済連合会は、開発事業者の▽開発期間の短さ▽統一したコンセプトで開発することの困難性―などといった懸念を払拭(ふっしょく)するための、公共の役割明確化の視点を求めた。UR都市機構は、土地利用イメージ図の表現方法を絞りすぎないようにし、にぎわいゾーンにもオープンスペース(憩い機能)が確保できるなどを示すべきとした。
事業化に向けては、県・市が行う都市基盤整備事業やまちづくり協議会とのエリアマネジメント、選手村整備事業との連携とともに、計画予定地を核とした港北エリアのまちづくりと連携してまちづくりを進めていく体制を示している。
選手村予定地は、競馬場が移転完了する2022年度から後利用・選手村整備事業者、県・市の都市基盤整備(土地区画整理の手法導入を想定)の工事が開始される計画だ。
提供:建通新聞社