東京都水道局が設置している水道事業運営戦略検討会議は、検討部会で議論してきた長期財政収支見通しをまとめた。給水収益については、人口減などの影響で徐々に減少し、2060年度には20年度(2974億円)を12%下回る2617億円になると推計。建設改良費は、給水所の新設や送水管の二重化、代替浄水施設の整備などを行う20年代の1352億円(年平均)をピークに、60年度には30・7%減の937億円になると見込んだ。企業債などを含めた収入の総額は50年度に3614億円、建設改良費に営業費用などを含めた支出の総額は3621億円となり7億円の収支不足が発生。60年度には収入が3500億円、支出が3525億円で収支不足が25億円になると推計している。同局では今後、これらの議論も踏まえて長期的な事業運営方針を検討し、19年度中に取りまとめる考えだ。
長期財政収支見通しの検討に当たり、建設改良費については、20年代は現時点で計画されている給水所の新設・拡充や送水管の二重化・ネットワーク化、浄水場の更新に先立つ代替浄水施設の整備の経費を見込んだ。配水本管の更新は29年度以降、供用年数を踏まえて年間延長22`とし、それを60年度まで継続する。また、30年代に東村山浄水場、50年代に金町浄水場の更新に着手することを前提に更新に必要な経費を計上。その他の施設や多摩地区の施設の再構築についても平準化しながら事業化するとして必要な経費を見込んだ。
施設整備の目標として、配水小管の耐震継手率について、20年度の47・2%を30年度に61・7%、40年度に72・0%、50年度に82・4%、60年度に92・7%とすることを設定。配水本管の耐震継手率については、20年度の45・5%を30年度に54・3%、40年度に62・3%、50年度に70・3%、60年度に78・4%に引き上げる。
検討部会では、給水収益が減少する中で、必要な施設整備を行いつつ企業債の償還の原資を確保するためには、まず支出を抑制し平準化する必要があると指摘。営業費用の縮減や供用年数を踏まえた施設の更新などによる建設改良費の平準化に加え、借り換え抑制や適切な充当率での企業債の発行など、中長期を見据えた財政上の工夫を引き続き講じることが重要だとした。
また、将来、人口の減少期を迎えても、独立採算制の下で、できる限り料金水準を維持し、持続可能な財政運営を行うという水道局の方針を実現するためには、長期的な事業運営方針に沿って、5カ年程度の中長期計画を策定して事業運営を進めるよう提案。一方で、安定給水に必要な施設更新の財源の観点から、給水収益の著しい減収など状況に大幅な変化が生じた場合には、適切な時期に料金水準の見直しを検討すべきだとも指摘している。
提供:建通新聞社