高知県は、高知市曙町2丁目にある国有地の旧陸軍歩兵第44連隊跡地保存・活用について、今後土地を購入し補修や耐震補強を進める方針をまとめた。2020年度の国有財産四国地方審議会で認可を受けた後、土地鑑定を実施し、用地を購入する考え。
44連隊跡地の敷地面積は5517平方bで、明治30年代に建設されたと見られる講堂と弾薬庫が現存している。戦後は国の印刷局の敷地となり、構造と弾薬庫も倉庫として使用されていたが、11年3月に国立印刷局高知出張所が閉鎖した。その後、いったんは財務省が一般競争入札により売却するため公告していたが、保存を求める声が相次ぎ、入札を中止していた。
講堂の規模は251・7平方b。レンガ基礎の上に土台を載せ、その上に柱建てをした木造平屋の建築物で、東西の桁に洋風トラスが組み込まれているなど、和風と洋風を取り込んだ明治期の近代和風建築。弾薬庫の規模は154・3平方b。構造は主体部分がレンガ組積造で、東屋の下屋に木構造を付加した。外壁には面によってレンガ壁の洋風と木造の和風となっており、当時の陸軍中央部の建築様式とされる。
県はこれまでに跡地保存活用検討委員会を4回開催し、基本方針をまとめた。基本方針によると、弾薬庫、講堂ともに国の登録有形文化財としたうえで、安全性を考慮するとともに歴史的価値を損なわない方法で保存修理を行うとしている。
具体的な方法として、弾薬庫は下屋のセメント瓦や破損した主体部屋根の隅棟と軒瓦のふきかえ、講堂は入り口シャッターを木製引き違い戸に復元し、東西窓の破損箇所を修理する。また一般公開を前提として耐震補強も行う考えで、建物内部には44連隊に関連する資料などを展示する方針。補修や補強の工法については、専門家の意見を聞きながら、文化財として必要な方法を検討する。順調に進めば22〜23年度の一般公開を見込む。
提供:建通新聞社