三重県の建設業の将来ビジョン「技術力を持ち地域に貢献できる建設業」の実現に向けた施策を盛り込む「次期三重県建設産業活性化プラン(仮称)」(以下、次期活性化プラン)を策定するため、県、有識者、建設業界(三重県建設業協会)など10人で構成する「三重県建設産業活性化プラン検討会議」の第1回会議が11月5日、津市内で行われた。企業の完工高がピーク時から半減するなどの厳しい受注環境下に置かれた建設業の現状などの説明とともに、担い手確保などへの対応など五つの取り組み方針案を示し、意見を交換した。今後、中間案の審議などを経て、2020年3月に策定する。
冒頭、渡辺克己県土整備部長があいさつに立ち、次期活性化プランが目指す方向性などを説明した。委員長には酒井俊典三重大学大学院教授を選出した。議事では、事務局側が現行の「新三重県建設産業活性化プラン」(以下、現活性化プラン)の取り組みと目標の達成状況、次期活性化プランの取り組み方針案などを説明した。
建設産業活性化プランは、12年度に最初の計画を策定し、16年度に現活性化プラン(名称は新活性化プラン)を策定した。今回の次期活性化プランは、19年度に策定し、「みえ県民力ビジョン・第三次行動計画」の期間と合わせて22年度までを計画期間とする。
現状と課題の主な内容を見ると、取り巻く環境として、県内における建設投資が、1991年の1兆5557億円をピークに、2017年度には7953億円と半減し、これに同調するように、建設企業平均完工高も2001年に2・3億円だったが、18年度は1・3億円まで減少した。建設業就業者数は、1995年に約9万2000人だったが、15年度には約6万1000人まで減少した。担い手確保の視点では、全国における新規高卒者の産業別離職率(3年以内の離職)が、建設業はここ10年程、43〜50%の範囲で推移しており、製造業の24〜28%など他産業と比較して高い数値となっている。その要因として、「週休2日制でない」「作業に危険が伴う」などの理由が上位を占めている。
目標の達成状況では、「技術力」のうち、若手技術者(39歳以下)の登用率について、21%の目標に対して12・3%と下回った。「地域貢献」のうち、地域維持型共同企業体での施工率は、53%の目標に対して66・5%と上回った。「経営力」のうち、売上高経利益率は、2・72%の目標に対して3・54%と上回り、目標値は達成したものの、他産業との比較では依然として低い現状がある。
次期活性化プランの策定に当たって、「新・担い手3法」で掲げる、働き方改革の推進(施工時期の平準化など)、生産性向上への取り組み(情報通信技術の活用など)、災害時の緊急対応強化(災害協定の締結、発注者間の連携など)をプラン作成に当たっての参考として紹介した。施工時期の平準化では、年間の工事のうち4〜6月期の稼働状況を表す「平準化率(稼働金額)」が、18年度は中部地方整備局が0・88、県が0・75、市町が0・60となり、市町での水準が低い状況を示した。
取り組み方針(案)では、「取り組みの方向」として、建設業の活性化のために、「建設業の担い手の確保」を重要な課題とし、「新たに働き方改革の視点を加えて、現活性化プランに引き続き入札。契約制度の改善を中心に取り組む」ものとした。
「取り組み方針」では、三つのキーワードごとに方針を掲げ、主な具体策を挙げた。「技術力」では、「技術の承継や新技術の活用に向けた取り組み」を方針として、若手技術者登用の促進、ICT試行工事の拡大、などを挙げた。「地域貢献」では、「地域維持や災害対応の体制強化の取り組み」を方針として、地域維持型業務の改善、災害対応訓練の促進、などを挙げた。「経営力」では、三つの方針を掲げ、「担い手確保や労働環境改善の取り組み」では、週休二日制工事の試行、建設キャリアアップシステムの活用、など。「生産性向上への取り組み」では、施工時期の平準化、ICT試行工事の拡大、など。「適正な利潤確保や安定経営への取り組み」では、予定価格事後公表の試行、安定した受注の確保、などを挙げた。
今後、11月定例月会議の常任委員会で中間案を示す予定。
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建通新聞社