九州建設業協会(会長・松尾哲吾佐賀県建設業協会長)の定例懇談会が15日、鹿児島市の城山ホテル鹿児島であった=写真=。業界の経営安定化や災害対応、担い手確保の観点から、国や地方自治体に対して公共投資に関する中長期計画額の提示を要望。各県の週休2日工事の実施状況も共有し、現場の実情に即した補正率の引き上げなどを求めた。
今年で97回目となった定例懇。本県での開催は2011年以来8年ぶりで、各県建協の代表者や国土交通省、県などの関係部局から約120人が出席した。
今後の公共投資に関する要望では、鹿児島建協の藤田護会長(藤田建設興業)が「社会資本整備は、切迫する国土強靭化や加速する老朽化対策、人口減少など、構造的な課題に直面している」と指摘。国の第4次社会資本整備重点計画(15〜20年度)で公共投資の計画額が具体化されていなかったことに触れ、「地方の建設産業が雇用や担い手を安定的に確保していく上で、中長期の投資計画額を示すのは極めて重要」と国や地方自治体に対応を促した。
■週休2日工事「実態反映して」
働き方改革の協議では、各県の取り組み状況を踏まえ、週休2日工事の諸経費に関する一層の改善を要望。「現場からは、労務費で現行の補正率(5%)を大きく上回る20%程度が必要な事例もあったと聞く」(長崎建協・谷村隆三会長)とし、「4週8休を標準とする経営形態が求められる中、適正利潤を確保して企業の健全経営につなげていくためには、実態を反映したさらなる引き上げが必要」と早期の対応を求めた。
このほか、若年者の入職を促進する観点から「ピーク時の水準に目を向けた設計労務単価引き上げ」や「1級施工管理技士学科試験の受験資格要件緩和(現行「3年以上」の実務経験短縮)」も求めた。
松尾会長(松尾建設)は、「直近の台風19号に伴う災害対応でも、地域建設業の必要性が改めて認識された。業界が将来にわたってその役割を果たしていくためには、公共事業予算の安定確保と適正な利潤確保が欠かせない」と訴えた。
これを受け、国土交通省大臣官房の林俊行建設流通政策審議官は「人材不足が顕著な中、業界の懸命な復旧活動に感謝したい。今後も新・担い手3法の浸透を図りながら、若者が魅力を感じられる環境整備に努めたい」と述べた。
採択した決議事項は次の通り。
▽国土強靭化基本計画に基づく具体的な中長期整備計画の策定、公共事業予算の持続的な増額確保、九州・沖縄地方への重点配分
▽地方建設業が適正利潤を確保し、一層の経営基盤強化が図れるよう、低入札調査基準価格の算定式見直しによる引き上げなど
▽働き方改革実現に向けた実効性のある対策の確立、設計労務単価や諸経費の引き上げ
■鹿建協・藤田会長
地域の期待を胸に
直近の台風19号や九州北部豪雨、熊本地震など甚大な災害が頻発する中、藤田会長は「地域の守り手として、建設業が果たすべき役割と期待はますます大きくなっている」と、業界の存在意義を改めてアピールした。
今後は、「働き方改革や生産性向上への対応が急務」とし、新・担い手3法やi−Construction、建設キャリアアップシステムなどの制度にも発注機関と連携を図りながら取り組んでいく意向。「先人が長年培ってきた建設業の現場力を伝承していくためにも、課題にはしっかり向き合っていく」と力を込めた。