建設新聞社
2019/10/19
【東北】ECI方式を初めて導入/田沢二期・抱返頭首工改修が対象/東北農政局
東北農政局は秋田県の田沢二期農業水利事業のうち、抱返(だきがえり)頭首工の耐震改修に初めてECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式を採用する方針を固めた。来月にも施工会社を対象とする技術協力業務を公告する見通し。
ECI方式は改正品確法において、仕様確定が困難な案件で提案によって予定価格を定めると規定された技術提案・交渉方式の1類型。技術協力・施工タイプとも呼ばれ、実施設計段階から施工会社のノウハウを反映する仕組みだ。国土交通省は熊本地震の復旧で掘削するトンネルや、橋梁補修など規模の大小を問わず全国で数件導入済みで、東北地方整備局もこのほど橋梁の床版取替に初めて採用した。
農林水産省としても技術提案・交渉方式の運用ガイドラインを策定しており、昨年度に初弾案件として北陸農政局が新川河口自然排水樋門(新潟市)の整備事業に導入。今回、東北農政局も同ガイドラインに基づき技術協力・施工タイプ(ECI方式)に取り組む。
具体的には今後、11月にも施工会社向け技術協力業務のプロポーザルを公告し、本年度末をメドに優先交渉権者を特定する。来年度当初には基本協定を結んで技術協力業務に着手。その際、来年度に別途委託するコンサルタント会社向け詳細設計業務の受注者と連携して設計をまとめ、技術協力業務の担当会社が仮設計画などにノウハウを反映させた施工計画を立てる。来夏の概算要求までに工事費を算出し、3カ年国債を設定して2021年度に着工、23年度完了を見込む。
ECI方式では、企業からの提案と概算要求はどちらが先でも構わないが、東北農政局は施工会社のノウハウを反映し易くなるよう、提案を受けた後で概算要求に臨む。
またプロポーザルの審査に当たり、北陸農政局は技術課題として三つの大項目ごと計7提案を求めたが、東北農政局は対象工事が北陸の事案より小規模なため提案数を削減する可能性はある。工期やコストも評価対象に含む見通しだ。技術者については複数申請を受け付け、設計(技術協力業務)時と施工時で異なる技術者の配置を認める考え。
業界全体の技術力向上へ他事業にも適応見据える
抱返頭首工は、秋田県東部の田沢二期農業水利事業で仙北市角館町広久内の景勝地である抱返り渓谷に所在し、玉川左岸から取水して田沢疏水左岸幹線用水路に供給している。前回改修から30年ほど経ち劣化しているため補修を立案した。
土木工事は取水口の耐震補強がメーンで、躯体上部に鋼板接着を施すほか、操作台の床版工や足場となっている中床版のコンクリート打換などを行う。取水口すぐ下流の固定堰も断面修復やひび割れ補修を施す。ゲート設備は鋼製の土砂吐ゲート1門と取水ゲート2門をステンレス製に交換する。当初設計は三祐コンサルタンツがまとめた。
土木工事は18年3月と7月、ゲート設備工事は別途同年4月に公告したがいずれも不調となった。その後、同年11月に土木とゲート設備をまとめてWTO案件として公告したが、同様に不調となっている。
このため、ことし9月に委託者を特定した「抱返頭首工施工計画その他技術検討業務」(担当=三祐コンサルタンツ)で入札不調原因の調査と特定、適用した標準施工歩掛の検証、工程照査などを行う。
これまでの公告では、取水口からつながる水路トンネルを運搬路に用いる計画だったが、実際は狭小なため機材搬入の難易度が高い。また、河川内工事で施工期間が限定され、出水にも考慮した安全な施工が求められる。こうした環境のため、特に仮設面で標準積算では適正な施工が難しい案件となっており、運搬路等を最大限に活用した仮設計画が重要となり得る。
東北農政局の居和弘農村振興部長は「現場条件が厳しいこともあり、安全でかつ品質を確保した最適な施工技術が導入されることで、発注者やコンサルタントも含めて業界全体のレベルアップにつながることを期待している」と話す。
なお同局は今後も、特に仮設計画の作成が難しい案件にECI方式の適用を見据えている。
提供:建設新聞社