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建設新聞社
2019/10/17

【東北】台風19号 東北の行政・業界などの対応/早期復旧へ応急対応などに一丸


 大型で強い勢力を保ったまま東日本を襲った台風19号―。その直撃を受けた各地では、記録的な豪雨による浸水などで多数の犠牲者が出たほか、堤防・道路をはじめとしたインフラや、住宅・建築物も甚大な被害を受けた。東北では、宮城県内の吉田川や福島・宮城県内の阿武隈川などが決壊し、大規模な浸水被害に見舞われた。こうした中、東北地方整備局をはじめとした関係機関や建設業界は、排水作業や応急復旧対応、技術的支援などを通じ、早期復旧へ一丸となって懸命な努力を続けている。
 各地で記録的な豪雨や暴風を巻き起こした台風19号による犠牲者の数は15日時点で60人を超え、行方不明者も多数出ている。インフラ被害も甚大だ。国土交通省のまとめ(15日5時現在)によると、東北の河川堤防決壊箇所は国管理河川で吉田川(宮城県大郷町)、阿武隈川(福島県須賀川市)の2河川・2カ所、宮城県管理河川で15河川・19カ所、福島県管理河川で13河川・18カ所が確認されているほか、各地で土砂崩れ、橋梁流出、上下水道施設の機能停止などが起こっている。
 こうした被害への対応に全局を挙げて臨む東北整備局は、リエゾン(災害対策現地情報連絡員)、TEC―FORCE(テックフォース=災害対策派遣隊)を被災した自治体に派遣。14日時点では、リエゾン計48人を3県16市町村に派遣し、必要とされる支援の把握・調整に努めている。広域派遣テックフォースは北海道開発局の5班19人、中部整備局の1班4人、中国整備局の2班6人が活動中。また橋梁が流出した福島県矢祭町からの要請を踏まえ、東北整備局と日本橋梁建設業協会からテックフォースを派遣し、仮橋の架設方法検討などを進める。
 排水ポンプ車や照明車などの災害対策車は、直轄設備対応に計39台、自治体支援に計12台を充てているほか、他整備局から派遣された計16台も稼働中だ。また被災状況を把握するため、防災ヘリによる調査を福島県内の阿武隈川周辺や宮城県内の吉田川周辺、丸森町周辺で実施した。
 阿武隈川に流入する支川の氾濫によって大規模な浸水が発生した丸森町への支援としては、排水ポンプ車の増台に加え、テックフォースの技術的助言に基づく樋管など既存施設を活用した自然排水の併用などにより町内中心部の浸水が15日7時時点で解消した。今後は他地域での浸水解消に力を注ぐ。


早期の激甚災害指定を国交相に要請

 宮城県内の被災状況を見ると、15日13時現在で住家被害として全壊1棟、半壊1棟、一部破損46棟、床上浸水244棟、床下浸水343棟などを確認。法面の崩れや冠水、倒木などの影響で68カ所が道路規制中となっている。また阿武隈急行の東船岡駅―富野駅(福島県)間で線路への土砂流入が27カ所発生。丸森町では水道管破損などで全域が断水している。
 災害協定に基づく応急対策業務の応援要請に当たっては、台風が来ると分かった先週時点で、宮城県建設業協会本部、県内各支部に「緊急時には対応してほしい」旨を伝達。被災後に県内各出先事務所から、宮建協各支部にあらためて対応を要請した。主に土砂流入などで通行止めとなった道路啓開と、河川の決壊箇所への大型土のう設置を求めている。
 14日には宮城県内を視察に訪れた国土交通省の赤羽一嘉大臣に対し、村井嘉浩知事が早期復旧に向けた対応を要請。この中では大規模浸水に見舞われた大郷町や丸森町などで排水対策を強化するとともに、災害査定の迅速化、激甚災害への早期指定などの必要性を訴えた。これに対し赤羽大臣も前向きな姿勢を打ち出した。
 福島県内では15日8時現在で、住家の全壊7棟、一部損壊142棟、床上浸水753棟、床下浸水462棟、県管理道293件、市町村道153件などの被害を確認。いわき市平浄水場が浸水により外部電源が受電不能および電気計装設備が水没したことで運転停止し、約4万5400戸が断水となっているほか、真野ダムの導水管が被災し南相馬市鹿島区、相馬市全域、新地町の一部が断水している。現在は、阿武隈川左岸の伊達市五十沢、阿武隈川左岸の須賀川市浜尾などで堤防の損傷・破堤が見つかったため、緊急復旧工事を進めている。
 岩手県内でも建物の床上・床下浸水、道路・ライフラインの被害などが発生している。今後は、調査中の被害について早期の情報集約に努め、被災者や被災市町村のニーズに沿いながら、復旧に向けた取り組みを進めていくこととしている。


壊堤防の応急復旧、道路啓開などに全力

 建設業界も各地で応急復旧などに力を尽くしている。宮城県建設業協会では12日18時に災害対策本部を設置。堤防が決壊した吉田川の応急復旧に向けては、資材搬入路の狭さなどに苦労を重ねながら、会員企業5社が役割を分担して施工中。被害が大きい丸森町などでは仙南支部が中心となって排水作業、応急復旧、道路啓開などを進めている。仙台市内では仙台建設業協会の会員企業が、それぞれ近隣インフラの法面崩壊などに対応している。
 福島県建設業協会では12日19時58分、本部事務局に災害対策本部を設置。各支部で万全の体制を敷くとともに速やかな情報提供を依頼した。14日には相馬市、南相馬市で断水により水不足が発生していることを確認し、相馬支部に協会災害備蓄品(水、食料など)を提供した。現在、相馬支部で被災状況を調査中で、15日に緊急会議を開き施工対応を決定。郡山支部では国道288号でニチレキ、県道郡山大越線でむさし建設が応急対応に当たっている。
 岩手県建設業協会では11日に、東北整備局岩手河川国道事務所と三陸国道事務所から久慈、岩泉、宮古、遠野、大船渡の沿岸6支部に応急対策対応の要請を受けた。翌12日には災害警戒本部を設け各支部に警戒を要請し、13日には県内13支部が応急対応に当たった。現在、東北整備局と国道45号の維持管理契約を締結している沿岸6支部の会員企業(久慈地区=宮城建設、宮古地区=三好建設、刈屋建設、釜石地区=小澤組、大船渡地区=佐藤渡辺)が道路啓開作業を進めている。
 大手ゼネコンで構成する日本建設業連合会東北支部(平田尚久支部長)も、東北整備局にリエゾン2人を派遣するなど、側面支援に当たっている。

提供:建設新聞社