愛知県と名古屋市は、県が計画する新体育館整備事業で、新体育館へのアクセス改善に向けた協議を進めている。名古屋城二の丸内にある現体育館は、地下鉄名城線市役所駅から名古屋城側に接続する出入り口がある一方、新体育館の最寄駅になる名城公園駅には名城公園側に直接接続する出入り口がない。歩行者の安全な通行を確保する必要性があることでは県・市ともに課題を共有しているものの、立体横断の方式や整備主体、費用負担など乗り越えていく課題は多い。新体育館は2024年度末に完成させる計画で、アクセス改善も同年度末までに完了させる必要があるが、現時点で事業化の時期は未定だ。
新体育館は、名古屋市が管理する名城公園内(北区名城1丁目)の北側、現在の野球グラウンド、四季の園、子供の広場がある一帯に建設する。現体育館は二の丸東駐車場に隣接する形で立地しているが、新体育館は利用者専用の駐車場を設けない計画となっている。
利用者は公共交通機関として地下鉄やバスで来場すると見込まれるが、地下鉄を利用する場合、名城線の名城公園駅が最寄り駅(2番出入り口)になる。ただ、同駅の地上出入り口は、新体育館の建設地となる名城公園とは大津通を挟んで反対側に位置し、地下鉄利用者が新体育館に向かおうとすれば、いったん地上に出た後、大津通の名城公園交差点を渡る必要がある。
新体育館の基本計画によると、アリーナの想定収容人数は1万5000人。イベント開催時などに、一度でないにしろ大半が幅50b(車道全8車線と中央分離帯)もある大津通を渡ることになると仮定した場合、車いす利用者を含む来場者の安全確保が大きな課題となるのは当然だ。
こうした現状を踏まえ、9月県議会(建設常任委員会)では、「地下通路など新たなアクセス方法を考えるべきではないか」とする一般質問があった。
対して新体育館を所管する公共建築課は、「地下通路は有効なアクセス手段の一つ。今後、大津通、名城公園を管理する名古屋市をはじめ、警察など関係機関と、まずは事務レベルで課題の共有を図りながら、具体化に向けた検討をはじめたい」との考えを示した。
県・市の両自治体を取材したところ、立体横断方式としては、歩道橋や地下通路といった案が考えられるが、一番の問題は横断方式よりもむしろ費用負担のようだ。市は、歩行者動線が大きく変わる施設を整備する主体が、費用を負担するのが原則という考え方を示した。ただ、名古屋城の遺構を保全活用して魅力を向上させるため、県体育館の移転を要請したのは当の名古屋市。26年アジア競技大会を成功に導くためにも、原則論だけでない議論が必要だ。
提供:建通新聞社