建設新聞社
2019/09/12
【東北】適正工期確保へ認識一致/3年ぶりに意見交換会/東北農政局、土地改良建設協
東北農政局と土地改良建設協会(宮本洋一会長)との3年ぶりとなる意見交換会が9日、仙台合同庁舎A棟の講堂で開かれた。仙台東地区の震災関連区画整理事業をめぐる公正取引委員会の審査を受けて実施されていなかったため、3年ぶりの開催となった。働き方改革の観点からも適正工期の確保が重要との認識で一致したほか、入札契約手続きに関し、質問回答期限から入札期限までの日数確保と、積算参考資料の公告時公表を出席会員の多くが要望した。
当日は東北農政局から川合靖洋局長、高居和弘農村振興部長、主要課長および国営事業所長らが顔をそろえたほか、本省農村振興局設計課施工企画調整室の武井一郎室長が出席。土地改良建設協会からは齊藤政満専務理事のほか、東北土地改良建設協会の月津肇会長以下、同協会会員各社が参加した。
冒頭、川合局長は「公取委の申し入れを真摯(しんし)に受け止め再発防止策を徹底している。こうした中、新担い手三法が制定されるなど土地改良は大きな転換点を迎えつつあり、きょうは率直かつ忌憚(きたん)ない意見交換をしたい」とあいさつ。これを受けて齊藤専務理事は「これまでも意見交換により具体的な改善がなされてきた。若手技術者育成など個々の企業だけでは解決が難しい問題に取り組むためにも、受発注者が正々堂々議論できるオープンかつ有意義な場にしたい」と述べた。
意見交換では協会側から▽適正な工期の確保▽入札契約手続きの改善▽発注前の適切な調査・設計・積算▽適切な設計変更などの対応▽働き方改革―の5点を大きなテーマとして要望した。
適正工期の確保に関する具体例として、仮設ヤードに借用した農地の原形復旧を3月末までの工期内に終えるよう求められるケースがあるが、東北は豪雪地の現場も多く、国債を活用して田植え前までにできるよう本省通知に基づく柔軟な運用が要望された。
また、着工時の工事円滑化会議では発注者が工程表を示すことになっているが、協会側の調査によると昨年11月末までの1年間、東北地区でクリティカルパスが提示された件数はゼロだったことが報告された。これを受けて高居部長は「各担当にクリティカルパスを盛り込んだ工程表提示の徹底を指示したので、今後改善されるだろう」と答えた。
入札契約手続きの改善に向けては、出席した多くの会員企業が「質問回答期限から入札期限までの日数確保」と「積算参考資料の公告時公表」を要望。前者については、質問への最終回答を受領してから入札期限まで正味1日程度しかないケースも散見され、対応に苦慮している実態を各社が打ち明け、併せて不備のない設計図書配布を求めた。
この点について本省の武井室長は「社内稟議(りんぎ)もままならない事態が発生していることは承知した。ことし3月からは最終回答日から入札期限まで約1週間確保できるよう通知した」と答え、農政局の岡本裕也設計課長も「東北も7月からは5日ほど確保するように取り組んでいる」と応じた。
積算参考資料の公表時期に関しては、現在は参加資格確認後となっているが、公告時としている農政局も複数あるため岡本課長は「他局の運用を参考に検討したい」と述べた。
このほか、通年施工できない現場が多いため、現場管理費などは率計上分より実費がかさむことから実態にそぐわないという指摘に武井室長が「対応できる仕組みがないため、仕組みをつくるよう検討を進めたい」と回答。
また、個別案件の公告時に標準案を質問した際に不明瞭な回答が見受けられ、適切な技術提案をするためにも標準案による詳しい工程表提示を求める意見や、国土交通省などが導入している、若手を監理技術者に登用できる専任補助者の制度を望む声も上がった。
本省通知へのフォローアップでは、本来は発注者が着工前に整理すべき事項がテーマとなっている技術提案課題の見直しや、プレキャスト製品に切り換える際に費用をみてもらえないことへの対応、工事一時中止ガイドラインの周知と運用徹底などが要望された。
提供:建設新聞社