9月3〜5日まで高松市の香川大学を中心に開催された第74回土木学会全国大会最終日の5日、同大学内で総括記者会見(主催・土木学会土木広報センター、土木学会全国大会実行委員会)が行われた=写真。土木学会の林康雄会長をはじめ、実行委員会委員長の小林稔氏(四国地方整備局長)、同幹事長の松島学氏(香川大学創造工学部教授)、土木学会専務理事の塚田幸広氏らが出席。日本最大級で四国では8年ぶり、高松市初の開催となった全国大会から発信したメッセージなどについて総括した。2020年度の次期全国大会は20年9月9〜11日に名古屋工業大学で行われる予定。
大会テーマは「激甚化する自然災害、挑戦する土木〜レジリエントな社会の構築」。社会のあらゆるレベルにおいてのリスク、危機管理対応能力と復元力を備えた社会の構築に向けて土木技術者がどう立ち向かうべきかを大会を通じて発信した。大会参加者は4日までで延べ約1万8000人、3日間で延べ約2万7000人に達した。
3日間にわたる年次学術講演会では全国の大学、研究所、国、県、市、民間企業などのさまざまな土木技術者、研究者による3622題の研究成果報告が行われた。構造物の設計、建設工事に関する発表数、参加者が突出して多く「土木工学は人々が社会生活を行う上で不可欠なインフラストラクチャーを取り扱う分野」とした上で、設計や工事の実務者に関する参加者が多かったことは非常に望ましい事」(松島幹事長)と総括。「実務的な発表が多かったことは創意工夫により、現場であらゆる課題を解決している証拠だ」と今大会の意義を評価した。
研究討論会は22世紀の国づくり、建設現場における生産性向上に向けた取り組みなど13題の研究討論が行われた。地震・台風災害・メンテナンスなど土木が抱える問題からワーク・ライフ・バランスまで幅広く議論、実情に応じた課題解決策を提案した。また、国際関連行事で主に東南アジア11カ国から約50人が参加し、若手の技術者による会議が行われた。海外から課題の発表やそれに対応する日本側の情報提供と活発な議論が行われ、国際貢献の観点からも有意義な会議となった。
4日の基調講演では土木学会の林会長が「人口減少社会におけるインフラストラクチャーのあり方」をテーマに、激甚化する災害への対応やインフラの適切な対応と、担い手確保と人材育成、今後の日本の成長をリードする社会基盤整備などを掲げ、成長エンジンとしてのスーパーメガリージョン構想を基軸に、四国新幹線導入の実現、青函マルチトンネル、高速道路の4車線化、人流・物流ネットワーク強化などを訴えた。
全体討論会には約1200人が参加。「レジリエントな社会構築に向けて〜未来に向けて土木が担うもの」をテーマに、新しい技術の活用例や先進的な取り組みを紹介。豊かで元気な、地域づくりの土木貢献の方向性などについて、香川大学地域強靱化研究センター長の金田義行教授をコーディネーターに、各方面で活躍する研究者、実務者を迎えてパネルディスカッションを行った。最先端の研究開発と社会への実装に加え、パネリストから災害への対応などの話題提供があり、土木の役割について議論し、特に災害対応や人材育成の重要性を指摘した。
提供:建通新聞社