斜面防災対策技術協会富山支部(田中洋一郎支部長)が主催する「子供砂防教室・体験学習会」が3日、立山カルデラ一帯で行われ、参加した地元の小学生が国重要文化財・白岩砂防堰堤など「砂防のメッカ」を巡り、事業の重要性に理解を深めた。
北陸地方整備局立山砂防事務所の協力で、荒天時を除き毎年開催。7回目となる今回は立山町の利田小学校の6年生47人が招かれた。一行はバスで小学校を出発し、立山町芦峅寺の立山カルデラ砂防博物館を見学。その後、バスで有峰林道から立山カルデラに入り、白岩砂防堰堤をはじめ、立山カルデラを見渡せる六九谷展望台、天涯の湯、立山温泉跡地を訪ねた。また、車窓から跡津川断層や常願寺川流域の国重要文化財・本宮砂防堰堤も確認した。帰路は水谷平でトロッコ(工事専用軌道)に乗り、連続18段のスイッチバックで急傾斜の斜面を下った。
案内には立山・神通砂防スペシャルエンジニア(TJSSE)である河村忠次氏や川田孝信氏らと、立山砂防事務所の職員が当たり、砂防の歴史や今も続く工事について解説した。川田氏は体験学習について「実際に来て見ないと分からないことがある。不安定な土砂はまだ多く、危険が残ることを、家に帰って家族にも話してほしい。一番は将来、これをやってみたいと思ってくれることだね」と話し、「すべては理解できなくても、子供たちが感じたことを、焦点を絞ってまとめて、報告が技術講演会で聞けることを楽しみにしている」と述べた。
大雨など全国で自然災害が相次いでいることを知る児童の関心は高く、説明には熱心に耳を傾けた。また、通常体験できないトロッコの乗車は歓声を上げ楽しんでいる様子だった。引率した石原芳隆教諭は、「私にとっても貴重な経験。特に六九谷展望台でのカルデラ全景が感動した。200人以上の方が泊り込みで働いていることも驚きだ」と感想を語る。参加した児童からは「災害の恐ろしさが改めて分かった。こんな山奥で富山平野に土砂が流れ込まないような対策が行われているとは思わなかった」、「日本一高い砂防堰堤があることや、世界遺産を目指していると聞いた」、「長年に渡る工事によって、生活が災害から守られていることを実感した」などの声が聞かれた。
子供砂防教室では、体験学習会に先立って、8月28日に小学校で出前講座が開かれ、砂防に関する事前学習や実験に取り組んだ。10月には、まとめの出前講座を実施。また、20年2月に同協会富山支部主催で開く「斜面防災対策技術講演会」の中で、児童が体験発表を行うことが恒例となっている。