千葉市は、千葉都市モノレール病院ルート(県庁前駅〜市立青葉病院間)の延伸計画を廃止するとともに、稲毛ルート(穴川駅〜JR稲毛海岸駅間)についてはモノレールの導入を行わないことを決定した。検証の結果、費用便益比が病院ルートで0・87、稲毛ルートで0・73となり、投資効果が見込めないことが明らかになった上に、モノレール会社の経営状況に及ぼす影響も大きいと判断したため。病院ルートの廃止については今後、都市計画法に基づく諸手続きを進める。
検証作業は昨年度、市が日本能率協会総合研究所(東京都港区芝公園3−1−22)に委託して行った。委託内容は、@既存資料による現状把握(上位計画、モノレール計画等、その他)A将来交通需要予測(前提条件の把握、沿線施設利用者数等の整理、予測手法の検討及び選定、延伸予測への対応、需要予測)B事業費の検討C収支採算性の検討D整備効果の検討(費用便益分析、整備効果の整理)E報告書の作成。
既設の県庁前駅から市立青葉病院に至る病院ルートは、単線行き違いあり、整備延長1・9kmで、県庁前駅を出発して県文化会館付近、千葉大学病院付近、それに市立青葉病院付近に3駅を新設するというもの。検証では整備区間の利用者数を3200人/日、概算整備費を196億円として費用便益比を求めた結果、0・87で1に満たなかった。
一方、稲毛ルートは延伸ルートが決定していないため、既設の穴川駅からJR稲毛駅を経由し、JR稲毛海岸駅に直結する極力短いルートで、既存道路や公園等を活用できるルートを選定。その結果、単線行き違いあり、整備延長4・3kmで、穴川駅を出発して稲毛区役所付近、稲毛区役所とJR稲毛駅の間、JR稲毛駅、京成稲毛駅、京成稲毛駅とJR稲毛海岸駅の間、JR稲毛海岸駅に合わせて6駅を新設するルートを想定。整備区間の利用者数を1200人/日、概算整備費を494億円として費用便益比を求めた結果、0・73となり、こちらも1に満たなかった。
今回の検証結果についてモノレール会社では、「費用対効果が低いことは明らか」とした上で、ここ数年の傾向として乗降客数は伸びているものの、すでに開業している区間の施設設備更新が必要なため、厳しい状況が続くと受けとめている。
また、有識者からは、モノレール延伸計画に必要とされた経費の一部を、すでに開業している区間の採算性向上につながる取り組み(サイクル&ライドや立地適正化計画との連携等)、バス走行環境の改善等に充てることも検討すべきとの意見も出せれた。
千葉都市モノレールは現在、1号線(千葉みなと〜県庁前間、6駅)3・2kmと2号線(千葉〜千城台間、13駅)12・0kmで営業している。1999年3月に現営業区間の中では最後の区間となる千葉〜県庁前が開業し、翌00年には延伸区間となる県庁前〜中央博物館・市立病院前間3・6km(末広ルート)の軌道運輸事業特許を取得し、01年に事業認可を取得した。
現ルートは02年に提案された。会社の経営悪化もあり、06年の会社再建にあわせて末広ルートは事業認可を取り消すとともに、08年に軌道運輸事業を廃止。これを受けて市は、09年に延伸事業計画を凍結した。
そうした中で、12年5月に策定した同市総合交通計画(計画期間12〜21年度)では、凍結している延伸区間について、市の財政状況が好転し事業化の検討が可能になった場合には、事業評価を行い、延伸の是非、ルートや整備手法を含めて総合的かつ客観的に判断するとしたため、市は再評価を行った。