習志野市は、賃貸借により市立幼稚園(4園・16室)、小学校(16校・314室)、中学校(7校・138室)の全468室に空調設備(エアコン)を設置し、本年7月1日から稼働を開始した。特筆されるのは、全教室に2台ずつガスヒートポンプエアコンを設置することで、静寂性を高めるとともに、状況に応じた1台運転による機能性と省力化を強化。また、教壇に直接風が当たらないという教師に対しての配慮や、約30社の市内業者の活用で、入念な準備と施工体制の構築により、実働3か月という工期を達成。全国のモデルケースにもなり得る事業として、注目を集めている。地球環境へのやさしさを考えながら、快適な学習環境を提供するため、施工協力業者一同は、設置対象468教室に温湿度計を寄贈した。(6面に宮本泰介・習志野市長のコメントなど)
全国のモデルケースにも
本年1月23日に開札した「市立幼稚園・小中学校空調設備賃貸借」の入札で、落札者を興銀リース(東京都港区虎ノ門1−2−6)に決定。落札額は20億7402万円(消費税抜き)で、本年6月末までに幼稚園(4園)と小中学校(23校)に空調設備を設置し、同7月1日から2032年6月末までの13年間(156か月間)にわたり、賃貸借を行うもの。施工監理及び維持管理は福井電機(千葉市中央区問屋町16−3)。興銀リースからの委任を受け、同事業の取りまとめを担当したのは、福井電機社会・産業ソリューション営業本部の岩井政幸部長。
リース方式による/設計・施工・維持管理
幼稚園と小中学校の計27施設・468教室にエアコンを設置するという大規模事業に加え、実働3月から5月末までの3か月間という工期を可能にしたのは、「多くの市内業者に協力をいただき、入念な準備による施工体制の構築ができた結果」(岩井部長)だという。
積算では、入念な現場調査や多角的な視点など、これまでの経験と実績から、電気方式(EHP)とガス方式(GHP)の検討を実施。GHPを採用することで「電気業者とガス業者に作業を分担してもらうことができた」とし、エネルギー料金の安いGHPのイニシャルコストを、EHPと同レベルにまでに低減した。
また、施工・維持管理を見据えた現場調査・設計・機器選定を行い、省力化、短納期、高品質化を実現。快適な冷暖房を目的とした「13年リースの性能発注」のため、費用と時間を節約した。
「冷暖房のゾー/ニング」を実現
「高品質の空調システム」として、教室全体に行き渡る気流、教壇の真ん中に立つ先生に配慮した設置方法を採用し、陽のあたるベランダ側、陽のあたらない廊下側の「冷暖房のゾーニング」を実現。また、室外機置場の検討に時間をかけ、騒音低減などの周辺環境に配慮するとともに、学校運営と維持管理メンテナンスを両立。モジュール化により、省エネをはじめ、万一の故障時でも、1台での部分運転を可能とした。
教室に冷房能力7・0kwの室内機2台(7・0kw×2=14・0kw)を設置することで、1台運転時よりも騒音値が低いという、学校環境衛生基準の騒音レベル(窓を閉じている時に50デシベル以下)に配慮した機器を選定。これは昨年、福井電機がいすみ市立小中学校空調設備整備事業の入札で、同様の提案を行い実証したもの。
代理店の強みと/生産体制の連携
昨今の全国的な学校空調事業のニーズから、空調機器の確保が大変困難な状況にある。岩井部長によると、今回の事業では、メーカー代理店の強みを活かした工場との生産体制連携により、納期管理の徹底・厳守とともに、日頃から取引のある市内業者の人脈、経験を活かし「事前準備、施工体制・スケジュール管理、品質の統一を図った」という。
さらに、早期の空調稼動を目標に「決まった定例会議は極力カットし、教育総務課担当者と弊社職員、協力業者とで頻繁に現場打ち合わせを行った」とし、それにより問題点を拾い出し「最優先で学校、関係機関との調整を図り、工期短縮に努めた」と話す。
市内業者と地域の協力/「コト」の重要性を認識
私たちのオフィス、現場事務所などは空調、衛生設備が整備されているからこそ、良い仕事が出来ると言える。一方、未来を担う地域の子供たちには、快適で衛生的な環境の中で学習してもらうことが必須となる。
昨今の猛暑を受け、まさに緊急事態の如く、学校空調が繁忙となり、機器も材料も人材も飽和状態となっているのが現状。私たち工事業者は普段、設計通りに、決められた工期の中で「モノ」を作ることが仕事である。しかし、この緊急事態に際しては、体制の構築をはじめ市内業者、地域の方々の協力による事業「コト」の重要性を認識した。
本事業では、これから13年間の維持管理を行っていくこととなる。弊社のノウハウを発揮しながら、地元企業との協力体制を構築し、今後も進めていければと考える。
福井電機且ミ会・産業ソリューション営業本部/部長/岩井政幸