新たな葛西臨海水族園の在り方を検討している東京都の有識者会議「葛西臨海水族園事業計画検討会」は、8月28日に開いた3回目の会合で事業手法について議論し、最も適した官民連携手法として「PFI―BTO」と「指定管理者制度」を採用することを了承した。民間の経営資源やノウハウを積極的に活用して水族園の魅力を高めながら、維持管理・運営を含めたトータルコストの削減が可能だと判断した。BTOは民間事業者が自らの資金で施設を整備し、所有権を行政に移転した後で運営する手法。葛西臨海水族園では施設整備に伴う資金調達と設計・施工、建物保守や警備・清掃などの維持管理を民間事業者が実施し、収集・飼育・繁殖や調査・研究、学習・体験など専門性の高い一部の管理運営業務を指定管理者に委ねる考え。
今回の検討会では、事務局である都が都市公園に活用される官民連携手法として「指定管理者制度」「設置管理許可制度」「PFI事業」「DB(設計・施工の一括発注、デザインビルド)・DBO(維持管理運営も含めた一括発注)」「Park―PFI」を提示し、実現可能性やメリット・デメリットを説明。都が水族園で実施する事業として、PFIと指定管理者制度を基本に検討を進める考えを示した。
このうちPFIについては、BOT(民間事業者が施設を建設し、一定期間運営した後に所有権を移転)とBTOを比較。BOTは運営期間中の固定資産税相当額が事業費に加わるため、BTOの方がコスト面でより効果が高いと説明した。
検討会ではこれを踏まえ、施設整備(資金調達、設計、施工)と維持管理運営の方式を「PFI―BTO」とし、維持管理運営のうち水族園の機能充実につながる業務については「指定管理者制度」を取り入れることを了承した。
新たな水族園の施設規模については、これまでの検討で「延べ床面積約2万2500平方b」、整備コストに関しては「244億〜276億円」と見積もっているが、PFIでの事業者の提案によっては10%程度削減することが可能とも試算した。
検討会では今後、これまでの検討結果を整理して「中間まとめ」を行い、これを基に都が年内に事業計画の素案を作成する。
葛西臨海水族園(江戸川区臨海町6、敷地面積約8万6000平方b)については、老朽化している既存施設を大規模改修することが技術的にもコスト的にも困難なため、現在の敷地内に新たな施設を建設し、完成後に機能を移転する計画。
提供:建通新聞社