東京都総務局は「小笠原諸島振興開発計画」の素案をまとめた。国の基本方針を踏まえながら2019〜23年度の5カ年で展開する事業の内容を示すもの。「実現可能な航空路案」の取りまとめに向けた課題整理や検討を進めることや、地籍調査の推進による土地の有効活用、小笠原住宅の計画的な建て替え、保育施設・村民会館の建て替え、太陽光発電だけで年間の半分程度の電力供給を行う実証事業に向けた調査などに取り組むことを盛り込んでいる。都民意見の反映手続きなどを経て11月中に行政計画として確定する。
分野別に展開する事業内容を見ると、30余りの島々が散在する土地の利用では、地籍調査を推進して土地所有者を明確にし、地域の将来像を見据えた土地利用の規制・誘導の在り方を検討する。
交通施設のうち港湾については、沖港の泊地しゅんせつや既存施設の計画的な維持管理、南海トラフ地震などに備えた岸壁や防波堤の改良の検討、港湾施設利用者の利便性を固める施設整備、沖防波堤の整備などの事業を着実に進める。
航空路の開設に関しては、洲崎地区への飛行場建設を視野に入れ、基本構造や工法の実現性を確認するための調査を行うとともに、関係者の合意形成に取り組み、「実現可能な航空路案」の取りまとめに向けて課題整理や検討を進めていく。
道路関係では、集落内や集落間を結ぶ道路の幅員縮小・線形不良区間の改良を進める他、道路斜面の落石や崩落防止対策、父島での避難道路の整備、母島での沖村9号線の新設などを実施する。
産業振興のうち農業については、農地造成やかんがい施設といった基盤整備を進めるとともに、耐風強化型ハウスや集出荷施設の整備を検討。水産業では漁港施設の機能強化や改修、計画的な維持管理などを行う。
住宅に関しては、定住を促すため持ち家施策の充実など小笠原村全体の住宅政策の展開について村が検討する。老朽化している小笠原住宅(国の補助を受けて都が建設)の建て替えについては、都と村の役割分担を明確にした上で、居住環境向上と自然環境に配慮した住まいづくりを検討し、早期着工を目指す。
簡易水道事業では、父島の第2原水調整池の整備や母島の浄水場の建て替えを継続し、19年度と21年度の完成を目指す。津波対策や渇水対策を考慮した水道施設整備と維持管理も引き続き行う。
ごみ処理関連の施策では、資源化中継施設の検討・設計を行って整備に着手するとともに、既存焼却施設の機能維持と長寿命化に向けて計画的な改修を実施する。
再生可能エネルギー導入の機運や、エネルギーの安定確保の必要性が高まっていることを踏まえ、公共施設や避難所機能を持つ防災拠点施設に太陽光発電を導入する。「ゼロエミッションアイランドの実現」の一環として、都と村、東京電力パワーグリッドの3者が連携し、母島で年間の半分程度の電力を太陽光発電だけで賄う実証事業に向けた調査などを行う。
教育関連の取り組みでは、老朽化した父島の小学校と中学校を村が計画的に建て替える。
提供:建通新聞社