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北海道建設新聞社
2019/08/13

【北海道】7空港10年で集中投資 国交省などがHKKグループと協定

 国土交通省、北海道、旭川市、帯広市は9日、道内7空港の一括民営化における優先交渉権者となっていた北海道空港(HKK)を中心とする北海道エアポートグループと基本協定を締結した。同日、公表した提案概要には当初10年程度で新千歳空港でターミナルビルを新設するだけでなく地方6空港にも積極的な設備投資計画が盛り込まれ、地域の行政や経済界からは大きな期待が寄せられた。一方、波及効果を最大化するため空港からの2次交通確保への対応を求める声も上がった。

 北海道エアポートグループはHKKを中心とする17者で構成。国管理の新千歳、函館、釧路、稚内、市管理の旭川、帯広、道管理の女満別の7空港一括民営化の優先交渉権者として7月3日に選定されており、今後、特定目的会社(SPC)を設立して10月にも実施契約を結ぶ。

 委託期間は30年間。7空港で約4290億円に上る設備投資をする。旅客ビルやエプロンなどを新増設して、7空港全体の旅客数を2017年度比1・6倍の4584万人、路線数を82路線増の142路線まで引き上げる。

 東アジアからの観光需要をメインターゲットとして10年間で道内の航空ネットワークを形成し、特に新千歳を除く地方6空港については17年度比約2倍の1048万人、43路線を62路線とする目標。地方への注力も手厚いのがポイントだ。

 中核の新千歳空港は約2950億円を投じ、国内・国際線共用旅客ビル(通称・T3)を現空港施設南側に新設。エプロンを拡張するなど積極的な設備投資を展開する。

 HKKは新千歳の役割について「北海道のショーケースとして各空港の特色を発信する」とし、地方空港を束ねる拠点機能をより強化する。

 国交省幹部は「新千歳で増加する旅客に対応するには妥当」と新ビルの建設などを評価。ただし、「現状の鉄路だけでは増加する旅客輸送は困難。JRも連携して動く必要があるのではないか」と新千歳空港駅の改良など2次交通を円滑化する必要性を指摘した。

 地方6空港にも約1340億円の設備投資が計画され、当初10年間で集中的な建設投資を予定。必ずしも新千歳を介さない離発着、国外旅客対応の強化を図る考えだ。

 旭川空港は商業施設拡充を目的とした約3000m²の空港ビル増築が主眼で旭川建設業協会の川島崇則会長は「グレードアップが図られる」と歓迎。半面「バスは運転手不足で到着便に対し1台しか運行できない状態。預けた手荷物を待ってからバスを出さなければならないという課題がクリアできれば」と2次交通の強化を求める。

 国際線旅客ビルの容量を拡大して、5年後の旅客数231万人を目指す函館空港。函館商工会議所の久保俊幸会頭は、地元経済への影響について「空港ビルは多くの地元雇用の受け皿。民営化後も雇用が維持されるよう働き掛ける」と言及。

 函館国際観光コンベンション協会は函館新外環状道路の整備でアクセス向上が図られた一方、江差、松前方面への高規格道路の整備が遅れていると提起。「ここをクリアしないと地域全体に効果が伝わらないのでは」と、官民連携したインフラ整備も求めた。

 帯広空港では貨物ビルの温度管理設備を新設し、長イモなど地元農産物の輸出に力を入れる。帯広市の田中敬二副市長は「十勝の目指す方向に一致している」と高く評価し、運営費の地元負担ゼロにも感謝した。

 釧路市の蝦名大也市長は、釧路空港では国際線拡充などが盛り込まれたことについて「ひがし北海道として連携しながら取り組んできたことを、さらに進めるもの」と評価した。

 稚内空港は、旅客ビル建て替えやチャーター便増加、新規路線開設などに取り組む予定。稚内商工会議所の中田伸也会頭は「宗谷管内にとって大きなチャンス」と語り、冬季の就航率向上などを期待する。

 そして、宿泊施設・ネイチャーガイド不足などの課題を挙げ「地元経済界としてもDMO(地域商社)などでの連携を視野に、一丸となって受け入れ体制の充実を図りたい」と地元も一翼を担う必要性を論じた。

 女満別空港には温度管理可能な貨物ビルの新設が盛り込まれた。大空町商工会の河西悟会長は現貨物ビルの老朽化を課題とし「新貨物ビルで地域産品の輸出拡大につながる」と強調した。

 空港敷地内には個人旅行者向けの安価なホテルが計画されているものの、女満別空港までJRも通っていないことを懸念して「宿泊客のための移動方法も考えなければならない」と提唱する。

 道内建設業関係者も強く民営化に注目。北海道建設業協会の栗田悟副会長はHKKグループの提案について、各空港でターミナルビルなどの設備投資に重点を置いている点に着目する。

 「建築を営業している会社にとっては好機。地方6空港がある建設会社にとっては大きな供給量になるのでは」との見解を示した。土木は、新千歳空港で誘導路やターミナルビル周辺の整備、空港の地下駅拡張といった計画が現時点では定まっていないため「単純に考えると土木的な仕事は多くない」とみる。

 今後のHKKグループの運営に関しては「運営がSPCになったからといって旅客が増えるわけだけではない。国や道、市町村が努力しなければ利用は増えない」と説き、「最初の5年間で何ができるかがポイント。注目するべき期間だ」と動向を見守っている。