京都市は25日、公契約審査委員会(委員長・辻田素子龍谷大学経済学部教授)を開き、平成30年度契約審査専門部会の審議結果、公契約基本条例の取組状況の報告を行った。
平成30年度契約審査専門部会の審議結果報告によると、平成30年度は第1回(平成30年10月31日開催)において、平成29年度に締結した契約のうち、契約金額3300万円以上の物品等の調達契約から、委員が抽出した4件(随意契約の京都市立中学校給食校外調理等業務委託(第3ブロック)、随意契約の平成29年度京都市ホームレス緊急一時宿泊事業に係る宿泊施設の賃貸借契約、一般競争入札の(単価契約)市バス・京都バス一日乗車券カード、公募型指名競争入札の人事給与システム本番用サーバ機器等の賃貸借及び保守サービス)を審議した。
第2回(平成31年1月23日開催)において、平成29年度下半期に締結した契約のうち、契約金額が2000万円以上の工事請負等の調達契約から、委員が抽出した4件(一般競争入札の京都市美術館再整備工事監理業務委託ただし、建築及び設備工事監理業務委託、随意契約の京都市立芸術大学及び京都市立銅駝美術工芸高等学校移転整備工事設計業務委託ただし、建築及び設備基本設計・実施設計業務委託、一般競争入札の烏丸線電気時計設備更新工事、随意契約の配水管布設替(その1)工事)を審議した。
第3回(平成31年3月25日開催)において、平成30年度上半期に締結した契約のうち、契約金額が2000万円以上の工事請負等の調達契約から、委員が抽出した4件(一般競争入札の平成29年災第1号道路災害復旧工事、随意契約の京都市楽只市営住宅整備工事ただし、13号棟・14号棟及び15号棟耐震改修その他衛生設備工事、随意契約の高速鉄道烏丸線レール削正工事、一般競争入札の低区御池連絡幹線配水管布設(その4)工事)を審議した。
審議結果として、第1回審議の京都市立中学校給食校外調理等業務委託(第3ブロック)について、「担当課において他都市の事例等を踏まえてプロポーザルへの見直しを検討していく予定とのことであり、見積合せによる現在の契約方法は、改善の余地がある」と指摘された。その他の案件は、契約方法について特に問題があったとは認められず、適切な契約方法であったことが確認されたと報告した。
市公契約基本条例について、平成30年度における主な取組状況は、@引き続き、市内中小企業の受注機会の確保の増大に向け、最大限努力A労働関係法令遵守状況報告書により、法令違反の是正指導を継続。また社会保険加入対策として、法定福利費の明示の義務付け等を開始Bダンピング対策の更なる強化に向け、常駐警備や建物清掃等の役務業務の積算基準を引き上げるとともに、最低制限価格の適用を継続C障害者就労支援、環境、地域防災力、男女共同参画などの社会的課題の解決に資する取組を継続実施。
市内中小企業の受注等の機会の拡大について、工事は「平成30年度における市内中小企業受注率は、契約件数ベースで85・75%(平成29年度は86・53%)、契約金額ベースで62・25%(平成29年度は60・21%)」「市内中小企業以外の契約金額ベースの受注率37・75%(平成29年度は39・79%)について、その内訳を見ると、WTO政府調達協定適用案件が26・58%(平成29年度は24・09%)と最も高く、次いで設備工事が7・76%(平成29年度は11・03%)、その他2・14%(平成29年度は3・15%)、土木工事が1・27%(平成29年度は1・52%)」「平成29年度と比べると、件数ベースでほぼ横ばい(マイナス0・78ポイント)、金額ベースで約2ポイント上昇している。
この金額ベースでの上昇は、地下鉄の運行管理や水環境保全センターの汚泥搬送機械などの大型の特殊設備工事が減少していることに伴い、これらの工事の割合が約11%から約8%への約3ポイント減少したことなどが影響している」とした。
物品は「平成30年度における市内中小企業受注率は契約件数ベースで65・49%(平成29年度は67・57%)、金額ベースで26・12%(平成29年度は25・13%)となった」「工事と比べ割合が低いが、これは地域要件や企業規模要件を設けることができないWTO政府調達協定適用案件が多いことが影響している。また地下鉄車両装置・汚泥処理設備等の機械器具や、コンピュータ等のリース等、市内中小企業では受注し難い案件が多いことも要因として挙げられる」「平成29年度と比べると、件数ベースは約2ポイント低下したものの、金額ベースではプラス0・99ポイントと若干上昇している」とした。
今後の方向性としては「引き続き公正性、競争性及び透明性の確保を前提として、市内中小企業の受注等の機械の確保に努めていく」とした。
公契約に従事する労働者の適正な労働環境の確保について、平成30年度における労働関係法令遵守状況報告書の提出状況を報告。提出事業者数は工事が延べ2573者(実数1792者)、役務委託が124者(実数78者)、指定管理が12者(実数8者)。
是正対象者数は18者(全て工事)。内訳は三六協定未締結・未届18者、就業規則未周知・未届1者、労働条件未通知1者(複数の是正が必要な者がいるため、合計は合致しない)。
今後の方向性としては「引き続き、事業者に丁寧な説明を行い、制度を着実に定着させていく。報告書提出の徹底や適切な指導等を通して、適正な労働環境の確保を図るとともに、常に制度・運用を点検し、見直しが必要ないか検討していく」「また週2日の工事現場閉所の本格実施に向け、週2日の現場閉所を行うモデル工事を1件程度実施する。なお建設業の働き方改革等の推進を目的に6月に成立した建設業法等の改正を踏まえ、今後、建設業許可への社会保険加入要件化等が具体化される予定であり、これらの動向を注視し、適切な対応に努めていく」とした。
公契約の適正な履行と質の確保について「平成30年度の落札率は工事が90・62%(平成29年度は91・06%)、物品が85・79%(平成29年度は84・03%)。平成29年度と比べ、工事がマイナス0・44ポイント、物品がプラス1・76ポイント」「工事に関しては、ダンピング対策の強化を図るため、最低制限価格の算定基準を、平成25年度から5年連続で引き上げている。測量、設計等の委託契約に関しては、令和元年度から最低制限価格の算定基準を更に引き上げている」などと報告した。
今後の方向性としては「公契約の適正な履行と質、更に労働者の適正な賃金を確保するために、適正な積算根拠に基づき、予定価格及び最低制限価格を算出していく」とした。
公契約を通じて社会的課題の解決に資する取組について、今後の方向性として「引き続き、現行の取組を推進していく。なお公平性や競争性、また特に中小企業に過度な負担や不利な取扱いにならないよう十分に配慮しつつ、公契約の性質や目的に応じ、入札・契約の際に、これらの取組を加点評価するなどの取組を検討していく。その際には事業者の取組を客観的に評価する仕組みについても十分研究していく」とした。