神奈川県は、夏場の最高気温上昇や集中豪雨の発生といった気候変動に適応するため、優先して取り組むべき分野などの検討に入った。有識者会議を設置したもので、7月22日の初会合では、県による河川整備や急傾斜地対策、堤防強化など自然災害に備えたハード対策を求める市町村調査の結果などが報告された。会議は2021年度まで6回にわたって開催される見込みで、21年8月に報告書をまとめる予定。
有識者会議は、学識経験者など5人の委員で構成する組織で、東京都市大学環境学部の馬場健司教授が座長を務める。事務局である県環境農政局の他、横浜、川崎、相模原の各政令市の担当部署も出席している。
県の気候変動適応に関する計画としては、地球温暖化対策計画(期間16〜30年度)がある。16年10月改定版では自然災害など7分野の適応策を盛り、これに基づき都市河川の重点整備、危機管理型水位計の設置、緑地の防災工事・維持管理などを進めてきた。
初会合では、現在の取り組み状況などが報告された他、環境計画課が市町村(政令市を除く)に行った調査結果も明らかにされた。
それによると、懸念している気候変動による影響で最も多いのは自然災害分野。回答18自治体のうち、17自治体が選んだもので、局地的集中豪雨による浸水被害、台風や大雨による河川氾濫、土石流・土砂災害、砂浜の浸食などがその内容。県として取り組むべき分野で最も多かったのも自然災害。15の自治体が2級河川を中心とした河川整備、下水道の排水力強化、急傾斜地対策などを挙げている。
会議では今後、各分野の県関係部署の意見や、現在の影響、将来予測される影響なども踏まえながら、優先すべき分野を検討していくことになる。12月の第2回会議で方向性(方針)、20年7月の第3回以降の会議で方向性に基づく具合的な取り組みを検討する予定。
県は今年4月、気候変動適応法に基づき、地域気候変動適応センターとしての機能を環境科学センターに位置付けた。地域における気候変動影響や適応に関する情報の収集・提供等の拠点としての役割を担う。センターに対しては、先進事例など情報の提供、相談対応などを求める意見が市町村から寄せられている。
なお、横浜気象台「神奈川県の21世紀末の気候」によると、年平均気温は100年で約4度上昇。猛暑日は100年後に約40日増加するという。滝のように降る雨(1時間降水量50_以上)の発生頻度は100年後に約2倍となる。
提供:建通新聞社