離島・沖島の振興に取り組んでいる近江八幡市はこのほど、沖島漁業会館の耐震診断調査業務を瑞晃建築事務所(東近江市)に委託した。約6ヵ月で調査をまとめ、年度内に地元との協議を重ね、早ければ来年度にも設計業務の発注を進める考え。
市は、昨年9月に策定し10月に農林水産省の承認を受けた『近江八幡市沖島地域浜の活力再生プラン』(以下、浜プラン)に位置付けた沖島漁業の6次産業化を推進するための施設、▽湖魚の冷蔵保管施設・処理加工施設▽沖島の食文化を味わえるレストラン・直売所―の整備を、漁業会館の更新又は増築によって行なう考えで、既存建物の活用が可能か耐震性を調査するもの。
また、市はこれに合わせ、老朽化した沖島コミュニティセンター及び沖島コミュニティ消防センターの機能集約・複合化を図る考えで、調査完了後に地元との協議等を経て判断し、20年度に設計業務へと繋げる予定。
浜プランは、沖島の漁業の振興を進めることで、漁業を中心に据えた沖島の活性化を図り、沖島における漁業従事者の所得を今後5年間で1割向上させることを目的にしている。
沖島漁業は、琵琶湖漁業全体の約4割の漁獲量を担う中心的な存在だが、高齢化と後継者不足への対応は喫緊の課題。一方で、漁業を生業とする沖島の生活様式が全て重要な文化遺産だとして15年に『琵琶湖とその水辺景観〜祈りと暮らしの水遺産』を構成する文化財の一つとして日本遺産に認定されるなど、注目が集まり来訪者は急増。伝統的な湖国の食文化を活かしたお弁当、物産品の加工販売などで来訪者をもてなし、新たな沖島グルメの開発など6次産業化への取組が進められている。
しかし、加工販売は既存の漁業会館のスペースを借用した限られた施設での提供であり、調理加工施設、レストラン、直売所等の整備と供給・サービス体制の充実が必要となっている。
このため浜プランでは、漁業収入を向上させるための核となる施設として、老朽化した漁業会館のリニューアルにより「冷蔵保管施設・加工施設・販売・交流促進施設等」の機能を合わせもつ新たな沖島漁業会館を整備するとし、市はこれにコミュニティセンター及び防災施設の複合化を含め、初年度となる19年度に漁業会館の耐震度を調査、検討をスタートする。
なお、既存の沖島漁業会館は鉄骨造2階建で延730平方b、81年(昭和56年)の建築で38年が経過。沖島コミュニティセンターは鉄骨造で延347・51平方b、82年(昭和57年)の建築で37年が経過。沖島コミュニティ消防センターは鉄構造で延79平方b、92年(平成4年)の建築で27年が経過している。沖島コミュニティセンター、沖島コミュニティ消防センターについて市は、18年度末に策定した総合管理計画に基づく個別施設計画で「21年度に更新または増築される予定の沖島漁業会館に機能を移転集約化。建物は機能集約後に除却する」との方針を盛り込んでいる。
提供:滋賀産業新聞