愛知県は7月3日、実施設計の段階から建設会社(技術協力者)の知見やノウハウを取り込み設計に反映させることができる、ECI方式※をジブリパーク整備に適用することを決め、技術協力者の募集を始めた。募集業務は「愛・地球博記念公園設計技術協力業務」(公募型プロポーザル)として公告。7月11日に説明会を行った後、同月末の期限で参加書類を受け付ける予定だ。ECI方式の採用は同県で初めて。
同業務では、スタジオジブリの持つアニメーション作品の世界観を忠実に再現するため、使用資材の加工や施工方法などについて、施工者と技術協力者が一体となって実施設計を進める。業務範囲は、2022年度に開業を予定する青春の丘、ジブリの大倉庫、どんどこ森の3エリアの実施設計に伴う技術協力。
技術協力者には、設計の確認(技術提案の適切な反映)、施工計画の作成の他、全体工事費の算出などを求める。
県は、技術提案に基づいて選定した優先交渉権者(技術協力者)と工事契約を前提に技術協力業務の契約を締結。優先交渉権者は実施設計後に価格交渉を行った上で、合意に至れば工事契約を結ぶ予定。合意に至らなかった場合は、改めて施工者を選定することになる。
全体工事費については、11月下旬、20年1月中旬、3月中旬までに3回算出し、来年度当初予算での本体工事費計上に備える。
実施設計の作成は、基本設計に続いて日本設計(東京都新宿区)が担当する。
参加申請に続く提案書の提出期限は9月2日。優先交渉権者の選定結果は同月中旬に通知し、同月末に契約する。委託料の上限額は913万円(税込み)。
ジブリパークは長久手市の愛・地球博記念公園に計画。スタジオジブリと中日新聞社が共同で施設の管理運営を行い、県がハード整備を担当。本年度に実施設計、プール撤去、20年度から本体工事に着手するスケジュールを組んでいる。
公告に当たり会見した大村秀章知事は、「ECIでは設計変更リスクと建設コストの低減、工事期間の最大化が図れる」などメリットを説明した。
【ECI方式】
ECI(Early Contractor Involvementは、実施設計の段階から施工者が参画し、施工者の提案を設計に反映する入札契約方式。コストやデザインなどの影響で、発注時に仕様を固めることが難しい事業に対応できる手法として、近年活用事例が増えている。県内では、常滑市が2012年に先行事例となる方式を施行して以来、新城市が新庁舎建設で、小牧市が新市民病院建設で同方式を採用。最近では、民間の厚生会(岐阜県美濃加茂市)が、新病院の施工者を同方式で選定した。
ジブリパークの整備は、アニメーション作品の世界観を表現する建物や造形物、風景をいかに作り込むかが大きな課題。質感や素材感にまで踏み込んで最適な仕様を探ることになる。県は、これを「過去に類を見ない特殊な工事」と考え、ECI方式の初採用を決めたようだ。
同方式には、施工者ならではの知見や独自技術を設計段階から盛り込むことができるため、コスト縮減と品質の両立、実工期短縮の可能性を探るといったメリットもある。今回、一般の関心も高い事業に採用されたことで、さらに多くの自治体や、民間事業者が活用することになるかもしれない。
提供:建通新聞社