愛知県は、今後県への届け出が義務付けられる、個人などが所有する農業用ため池の諸元データ(堤体の高さや貯水量など)について、所有者に代わって算定調査を行う方針を明らかにした。「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」の施行(7月1日)に伴い、法施行後6カ月以内に、県に対してため池の諸元データの届け出が必要になるため、個人等所有者の支援措置として県が調査を代行する。対象となるため池は98カ所。
同法では、防災の観点から全ての農業用ため池を対象に、堤体の高さや貯水量などため池に関わる諸元データの届け出などを義務付けた。調査の代行は、6月19日の県議会で新海正春議員の質問に水野康弘農林基盤局長が答えたもので、「市町と連携し、ホームページや広報紙に届け出制度の内容を掲載するなどし、農業関係者や所有者に周知を図る」と述べるとともに、「県内のため池全2170カ所中届け出が必要となるため池が1180カ所あり、このうち、すでに県で把握している1082カ所については速やかに緒元データを所有者に提供していく」とする一方、堤体の高さや貯水量が把握できていない残る98カ所については、「所有者による緒元データの算定は困難」と判断。「市町と協力し、県が緒元データを調査・算定し、所有者に提供していく」方針を示した。
同法ではこの他、ため池が決壊した場合に下流側の民家や公共施設などに被害が及ぶ恐れがあると県知事が判断した場合、特定農業用ため池として指定。必要な場合、速やかに対策を行うことを義務付けており、これらの対策についても対応を急ぐ方針だ。
同県では、同法公布以前から全国に先駆け、県内の防災重点ため池735カ所(旧基準分)を対象に、耐震診断、耐震整備、ハザードマップ作成・公表の3本柱で対策を行ってきた。昨年度末時点で、耐震診断721カ所を終え、399カ所で耐震性の不足を確認済み。このうち98カ所の耐震整備を完了している。ハザードマップは661カ所で作成済み。
昨年度には、豪雨に対するため池の安全性の調査も実施。現況の洪水吐の能力不足が判明したため池については、耐震対策と豪雨対策を一体的に整備する工事に着手している。
また、国が定めた新たな選定基準に基づき、県が5月末までに再選定した1053カ所の防災重点ため池については、これまでと同様に関係市町や受益農家と調整を進め、ソフト・ハード両面から防災・減災に取り組むとともに、耐震対策と豪雨対策を一体的に整備する補助事業を活用し、効率的に整備を進める方針だ。
ため池の保全・管理を巡っては、決壊により人的被害が発生した昨年の西日本豪雨を契機に、防災重点ため池の選定基準を改正した他、「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」を作った。ただ、ため池は個人所有が多く、円滑に対策を講じるためには行政支援による所有者の負担軽減が欠かせない側面がある。
提供:建通新聞社