国や地方公共団体、特殊法人などの発注者、建設業団体の各担当者らが参加する近畿ブロックi−Construction推進連絡調整会議の第4回会合が6月6日に大阪市内で開かれた。意見交換では、兵庫県が「ICT活用工事の件数を公表したい」と議題を提案。府県や政令市の大半は発注見通しの段階での公表に至っておらず、国土交通省近畿地方整備局企画部の森戸義貴部長は「ぜひ発注見通しの段階で可能なものは、ICT活用対象であると示すことを検討してほしい」と呼び掛けた。
兵庫県がICT活用対象の件数公表を議題提案したのは、発注者があらかじめ件数を示すことでICT建機を持つあるいは持とうとする建設業者の投資意欲を高め、結果としてICT活用対象が増えるのではないかという狙いだ。
府県や政令市からは「件数は把握しており、できるだけ早い段階で公表したい」という意見があったものの、発注見通しの段階など公告前に事前公表しているのは奈良県のみ。施工者希望型による発注が多いのも件数の把握や発注見通し段階での公表の難しさに挙げる。
そもそも政令市レベルでICT活用の実績が乏しいのが現状だ。「施工土量の小規模な工事が多い」「都心部の工事が多い」「維持補修の工事が多い」という理由がある。
ただ、活用対象の拡大に向けては、近畿地方整備局から2019年度の実施方針として土工(掘削)で土量5000立方b未満の小規模施工区分を新設、1000立方b未満についても小規模土工の実施状況を踏まえて検討することを説明。兵庫県も4月からの取り組みとして5000立方b以上の工事を全て発注者指定型で行うこととするなど、小規模土工へのICT活用への広がりも見せようとしている。
政令市などもICT活用の必要を認識。「建設業界の発展のためにも欠かせない」(京都市)、「これまで実績はないが万博開催に向けた会場周辺の道路工事や淀川左岸線など大規模工事が控えており活用していく必要がある」(大阪市)、「決して避けては通れない時代の潮流だ。例えば部分的にでも導入する可能性を探りたい」(神戸市)という意見や、「活用実績はないが開削トンネルや橋梁下部工には適用できる」(阪神高速道路会社)、「遠方の現場とはウェブカメラを通じて管理でき、双方の生産性向上につながっている」(日本下水道事業団)という前向きな意見もあった。
会議に参加した立命館大学理工学部の建山和由教授は「自治体としても今後職員の数が減る中でメンテナンスの仕事を維持し、災害が多発する中で防災対策に取り組んでいくために、ICT技術をどう使っていくかを考えてほしい」、土木学会関西支部の重松孝昌幹事長も「土木工事など社会インフラへの投資はますます少なくなる。現場も都市全体もわれわれの行動もデジタル化する必要がある」と話し、さらなる普及、拡大を促した。
提供:建通新聞社