長野県が8月1日から適用する入札制度の改革は、大きく分けて「建設における工事の失格基準の見直し」「WTО案件の低入札調査基準の見直し」「総合評価での地域貢献等簡易型」の3点。
◎失格基準の見直し○
県では、入札価格が当該契約の内容に適合した履行がなされない恐れがあると認められる場合の基準である「失格基準」を設定し、この基準を下回った者の入札は無効としている。
2019(平成31)年3月29日付で総務省および国土交通省から「工事請負契約に係る低入札価格調査基準中央公共工事契約制度運用連絡協議会モデル(中央公契連モデル)における調査基準価格の設定範囲の上限を10分の9から10分の9.2に引き上げる等の見直しを行ったので、各地方公共団体も算定方式の改定等により適切に見直すよう要請する」との通知がなされた。
中央公契連モデルの見直し内容と整合を図るとともに、建設産業を取りまく環境等を踏まえ、失格基準の見直しを行うというもの。
対象は100万円を超えWTО未満は「予定価格の87.5〜92.5%の変動制」とする現行を「予定価格の89.5〜94.5%の変動制」に変更する。上限値は、中央公契連モデルの計算式に「労働賃金の適正な水準の確保」と「企業の適正な利潤の確保」の要素を加味し、その計算式から算出される失格基準と県が発注する工事の規模を勘案して設定した。
下限値は、現行と同様に、上限値から5ポイント低く設定した。これによる効果は、品質低下の防止と企業の適切な利潤の確保による適正な労働賃金の支払い、担い手の確保・育成等が見込まれる。実施時期は8月1日の公告分から適用する。
失格基準の上・下限値の設定方法(図を参照)については、従来の計算式を改定。上限値の設定に際して、従前は県の計算式のなかで現場管理費に80%をかけていたものを、改定版では90%をかけることにした。下限値の設定では、国の計算式を準拠し直接工事費に97%(従前は95%)をかけ、現場管理費も90%(同80%)をかけるように変更した。
◎WTО案件の低入札調査基準の見直し○
WTО案件(県工事の場合、現在の円レートで22億9000万円以上)の低入札価格調査基準について、国土交通省では、2019(令和元)年度から建設工事における低入札価格調査基準の範囲を「0.70〜0.90」から「0.75〜0.92」に引き上げる改正を実施。これに伴い、低入札価格調査対象工事における特別重点調査の実施対象等についても改正が行われている。
長野県の場合、2018(平成30)年度に調査基準の見直しに加え、調査基準価格未満の者に対する技術提案点の補正などの改正により、ダンピング対策を講じてきた。
今回の見直しではまず、調査基準価格を予定価格の92%相当額(現行は90%)に設定。続いて、特別重点調査の実施対象(基準)の見直しも行い、従来は予定価格の75%だった基準を改定では85%に引き上げる。この場合、各費用の項目の基準も改定し、総額・項目のいずれかが下回った場合でも特別重点調査を行う。(詳細は図を参照)
調査基準価格未満の技術提案点の補正率の見直しも行う(図を参照)。技術提案点が減点補正される範囲が、従来は予価90%から60%だったものが、改定では92%〜78%に上方スライド。予定価格の78%以下の場合は、どんなに内容の良い技術提案でも技術提案点はゼロ点となってしまう。8月1日以降公告分に適用。
◎地域貢献等簡易型の新設○
総合評価落札方式での地域貢献等簡易型の試行内容は、工事成績2点、災害復旧工事実績1点、応急活動実績1点、小規模当番登録1点、除雪など活動0.5点、災害対応重機保有0.5点、対象工事の近隣本店1点(同一市町村本店0.5点)、若手技術者(40歳以下)配置0.25点、手持ち工事量マイナス1〜0点。
これらを総合すると価格以外の評価点6.25〜7.25点で、価格点は92.75〜93.75点で推移する。
対象工事は土木一式工事(予定価格5000万円未満)、とび・土工・コンクリート工事(3000万円未満)が対象。試行開始は8月公告案件から適用する。
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新建新聞社