三蒲地区生コンクリート協同組合(三条市須頃 中島宏司理事長)は7日、19年度生コンクリート勉強会を三条市内で開いた。建設業者やコンサルタント、官公庁職員ら約200人が参加し、コンクリートを取り巻く環境や現状の課題、技術力向上に向けた取り組みについて意見を交わした。
発注者、施工者、材料メーカーなど生コン関係者が集まり、それぞれの立場から課題解決に向けて語り合う場として毎年開催しており、今回が16回目。後援は新潟県生コンクリート工業組合。学識経験者による講演と業界団体からの情報提供、パネルディスカッション「みんなで話そう生コン談義」で構成される。
始めに、新潟工科大学名誉教授の地濃茂雄氏が「先人に学ぶ『技と心』〜石・木・コンクリート考〜」と題し講演。アーチ構造をキーワードに、石材を使った古代ローマの建築物や木材を中心とした日本の法隆寺、木造アーチ橋の岩国錦帯橋などを紹介し、古来からの技術が現在の東京スカイツリーや新国立競技場にも応用されていることを説明した。その上で、最新技術のAIにもできないことはあると指摘、「人もコンクリートも大いなるものに生かされている」とし、感性を磨くことの重要性を訴えた。
続いて、一般社団法人セメント協会と新潟県生コンクリート工業組合が業界の動向に関する情報提供を行った。生コン工組は、残コン・戻りコンが工場の負担増加と環境負荷につながっているとして、処理の有償化を発表。5000円/立方メートルとし、10月から全県下で実施する。発生を抑えるため、適正な注文を行うよう協力を求めた。
長岡技術科学大学名誉教授の丸山久一氏は「インフラの維持管理の現状と課題」と題し、橋梁などのインフラメンテナンスに関する国の施策と地方の実態、今後の課題について解説した。丸山教授は、対象橋梁のほとんどが延長の短いコンクリート橋であり、技術者と予算が少ない市町村管理であると指摘。今後の維持管理のシナリオとして構造物の供用年数を具体的に定め、計画・設計段階から維持管理における経済性の検討を可能にするとともに、劣化に関する情報を明確にできるようにすべきとした。
引き続き行われた生コン談義では、地濃教授がコーディネーターとなり丸山教授、新潟県土木部技術管理課工事検査室長の峰村修氏、水倉組技術営業部長の小林秀一氏、セメント協会コンクリート普及専門委員会の飯田達郎氏、三蒲地区生コンクリート協同組合の川井勝茂氏がパネラーとして登壇。施工における問題点や、構造物の課題に関する参加者からの質問に答える形で意見を交わした。残コン・戻りコンについて、現場では多めに発注するのが一般的であり、「余らせない工夫が必要」とした。コンクリート強度の問題では、工場によって必要な配合数値がばらつくことに関して、各工場が用いる河川の砂質の違いがクローズアップされた。丸山教授は「コンクリートは完成した技術ではなく、分からない部分も多い。これまで培われた技術により製品ラインに持ってきている」とし、「皆さんの日々の疑問が少しでも解消されれば、この勉強会を開いてよかったと感じる。情報交換しながら、ともに技術の向上を目指したい」とまとめた。