工事成績評定標準化 県下の動き 公共事業の品質、透明・公平性を確保 完成した公共工事の施工状況や出来形・出来ばえ、創意工夫などを、発注者が評価・採点する『工事成績評定』。公共工事の品質確保はもちろん、評価結果が請負業者の選定にもつながることから、受発注者ともに非常に重要な制度だといえる。この工事成績評定は、公共工事の品質確保促進法や、同法の基本方針を受け、新たな段階に進んでいる。県内の動きを追った。
2005年の品確法では検査や評定の充実が規定された。さらに基本方針では、工事成績評定について公正な評価を行うとともに評定結果の発注者間での相互利用を促進するため、国と地方公共団体との連携により、評定項目の標準化に努める≠ニした。
これらを踏まえた国の動きがひと段落した2015年度、長崎県は国に準拠した工事成績評定を導入。「出来形」と「品質」の細別考査項目を5段階から7段階に、「地域貢献」は3段階から5段階に、「施工体制一般」と「施工管理」は4段階から5段階に、それぞれ細分化した。
これらは、きめ細かな評価による品質の確保だけでなく、標準化した指標の活用による透明性・公平性の確保にもつながる。県では、県下の市町に対し、細分化した工事成績評定を周知し、国や県に準拠した制度の導入を促している。その成果は「ここ1〜2年で急激に目に見えてきた」(県担当者)。前年度末時点で、長崎、佐世保、諫早、大村、西海、雲仙、南島原、波佐見、佐々の9市町が7段階評価の成績評定を導入しているという。
標準化とともに体制の構築も 国・県に準拠した標準化の動きは、将来的には、国・県・市町間で評定結果の相互利用にもつながる可能性がある。受注者にとっても、これまで施工実績が無い発注機関への入札参加の可能性が生まれる。良質な施工が新たな仕事につながる。長期的に事業量の大幅な拡大が望めない状況下で、持続的な発展のために重要な要素になる。
ただ、市町が準拠を急ぎ、拙速な対応にならないか懸念する声があるのも事実。4月にある市で行われた入札制度関係の説明会の場では、参加した事業者から、検査する職員が新たな評定をしっかり理解し、適切に対応できるような体制を整えてから標準化に取り組むべきとする意見が複数出た。適切な体制を整えることは、技術系職員が少ない市町が直面する大きな課題であることは事実だ。
県としても、16年度から市町の工事検査職員らを対象にした会議を開催。制度の周知や情報の共有を進めている。さらに、18年度からは市町の担当職員が県の工事検査に立ち会う(臨場)機会を、市町の要請に応じて設定しているという。市町は、これらの機会を積極的に活用し、新制度の導入に併せて、適切な運用体制も整えていかなければならない。
全市町の導入で標準化が効果発揮 独自の評定や県の以前の評定に準じるなど、評定を標準化していないのは、島原、平戸、松浦、対馬、壱岐、五島、長与、東彼杵、川棚、新上五島の10市町(18年度末時点)。さらに県内には、工事の評定(採点)制度がない自治体も依然としてあるのが実状だ。
公共工事の品質の確保はもちろん、事業者の選定や評価の透明性・公平性の確保は、受発注者だけの問題ではない。工事成績評定は、限られた財源を効果的に活用し、良質な社会資本と技術に優れた企業を次世代に残すために不可欠な制度の一つであることは間違いない。未導入の自治体は、まずは試行に向けた一歩を踏み出してほしい。標準化は、あらゆる発注者が取り組んで初めて、大きく効果を発揮するものだからだ。