日本工業経済新聞社(茨城)
2019/05/14
【茨城】軽水臨界実験装置を解体撤去/原子力機構
日本原子力研究開発機構は原子力科学研究所(東海村)の「TCA」(軽水臨界実験装置)施設の廃止措置(解体撤去)計画の認可を原子力規制委員会へ申請した。解体撤去する施設は炉心建家、附属建家、機械室、廃水タンク室、排風機エリア排気筒。費用は施設解体費約2億円、廃棄物処理処分費約2億8000万円の合計約4億7000万円(端数処理により合計は一致しない)。
認可を取得後、2020年度までの第1段階で原子炉の機能停止、燃料引き渡しを進める。25年度までの第2段階では維持管理を行い、26年度から28年度までの第3段階で施設・設備の解体撤去、管理区域の解除、建家の解体撤去を計画している。
TCA(Tank-type Critical Assembly)は軽水炉の炉物理および臨界安全性に関する研究に用いた臨界実験装置。1962年に初臨界を達成後、2010年11月まで1万1835回の運転を行った。主要諸元は炉型は濃縮ウラン・プルトニウム燃料軽水減速型、最大熱出力は200W。炉心形状は縦型円筒上部開放タンクで、減速材は軽水。制御装置は水位制御装置、安全板駆動装置。
実験データの取得が完了し、施設が老朽化しているため廃止措置を進めることになり、計画認可申請を行った。
廃止措置は3段階に分けて実施する。
第1段階(19〜20年度)では、原子炉の機能停止として燃料の再装荷ができなくするため炉心タンク上部開放部を閉止する。燃料は炉心タンクから取り出し済みで、減速材の軽水は系統から排水済み。燃料は国内外の許可事業者へ引き渡す。
第2段階(21〜25年度)では維持管理、解体撤去の準備を行う。
第3段階(26〜28年度)では施設・設備の解体撤去を進め、管理区域を解除。その後、建家を解体撤去する。
解体撤去の廃棄物は合計2070t。そのうち低レベル放射性廃棄物が77t、放射性廃棄物として扱う必要がないのが26t、放射性廃棄物ではない廃棄物が1967t。
解体対象施設は炉心建家、附属建家、機械室、廃水タンク室、排風機エリア、排気筒、これらの建家・エリア内外に設置される全施設・設備。
解体撤去工事は、放射線管理区域内に設置されている施設・設備は汚染を除去した後、解体撤去を行う。解体撤去後、汚染状況を確認のうえ、保安規定に定める管理区域を順次解除する。
その後、建家などの構造物は粉塵障害対策などの一般安全対策を講じたうえで、ジャイアントブレーカなどの大型重機、クレーンなどを用いて解体する。解体後、土地に汚染が無いことを確認する。放射線廃棄物は放射性廃棄物処理場へ引き渡す。
安全対策では汚染の拡大防止へ養生、集塵装置、高性能フィルタ付局所排気装置を使用。被ばく低減対策、事故防止対策、不法な近接・侵入防止対策も行う。
TCAの廃止措置対象の施設と設備は次のとおり。
◆炉心建家=炉心タンク、炉心タンク架台、炉心構造物(燃料支持板、格子板支持枠)、起動用中性子源装置、ダンプタンク、給水ポンプ、配管(排水管、給水管、弁)、純水装置、加熱装置、操作空気装置、水位制御装置、水位制限装置、安全板装置、実験制御棒装置、廃水ピット
◆附属建家(燃料貯蔵室、作業室、第1貯蔵室、第2貯蔵室、汚染検査室、除染室、制御室、測定室、電気機械室、居室など)=燃料要素格子格納容器、核計装設備、プロセス計装設備、安全保護回路、制御盤、屋内管理用の主要設備、屋外管理用の主要設備、無停電電源装置、主要な実験設備
◆機械室=気体廃棄物の廃棄設備
◆廃水タンク室=液体廃棄物の廃棄設備(廃水タンク)
◆排風機エリア=気体廃棄物の廃棄設備(炉室系統、燃料貯蔵室等系統)
◆排気筒
※原子力科学研究所の原子炉施設の共通施設である放射性廃棄物の廃棄施設の放射性廃棄物処理場、放射線管理施設の屋外管理用の主要な設備のうちモニタリングポスト、モニタリングステーション装置、中央監視装置、環境放射線観測車は解体しない。