秋田県港湾空港課は、大型クルーズ船の受け入れによる賑わい創出を促進させるため、秋田港の改訂港湾計画に基づく道の駅あきた港「セリオン」前の岸壁整備や、背後地にある多機能複合施設周辺の臨港道路整備といった基盤整備に向け、調査・設計を実施する。国土交通省はこれに対し「官民連携基盤整備推進調査費」の配分を決定しており、港湾空港課では基盤整備を進めて世界最大級のクルーズ船「オアシス・オブ・ザ・シーズ」の寄港を目指したい考えだ。
県は全国的に高まっているクルーズ需要を取り込んで観光誘客と地域活性化を図るため、クルーズ船の寄港回数増に対応した受け入れ環境の整備を推進するとともに、官民一体によるクルーズ振興への取り組みを図っている。
平成29年3月には国・県・市や商工団体、民間企業、観光団体、金融、大学などで組織する「あきたクルーズ振興協議会」が設立されているほか、同30年3月には第3期ふるさと秋田元気創造プランに、クルーズ船の誘致と受け入れ環境の整備を位置づけている。また、秋田市は広域観光周遊ルートである「日本の奥の院・東北探訪ルート」のモデルコース上に位置するため、同市を拠点に複数自治体の観光地を巡るツアーも期待されている。
秋田港では平成26年に7回だったクルーズ船の寄港回数も、翌27年には14回、28年10回、29年18回、30年17回と増加し、今年は過去最高の23回を計画。寄港の増加とともに、秋田犬や伝統行事などによる観光客の出迎え、出港時における花火の打ち上げなど、歓送迎のイベントも実施している。
平成30年からは、JRがクルーズ船利用者を秋田港からJR秋田駅に輸送する「秋田港クルーズ列車」も本格運行。貨物線を活用して乗客を輸送する全国初の取り組みとして船会社や乗客に好評を得ており、今月に入ってから寄港した「MSCスプレンディダ」の乗客も、同列車を活用して県内観光地へ足を延ばしている。
今回、国土交通省からの配分が決まった「官民連携基盤整備推進調査費」は、民間の設備投資などと一体的に行う地方公共団体の基盤整備を支援するもので、今年度第1回目の募集分として4月23日に配分が決定、全国では9件、東北では本県と福島県会津若松市の2件が採択されている。
秋田港を取り巻く民間事業者の活動では、これまでに行ってきた歓迎イベントやクルーズ列車の運行のほか、今後は道の駅あきた港「セリオン」における物販施設拡張や、新しい観光ツアー、多機能複合施設の拡張などが予定されている。
県はこのような民間の動きとも連動させ、増加する秋田竿燈祭り期間中の寄港希望や2隻同時での着岸に対応させたい考えで、世界最大級のクルーズ船「オアシス・オブ・ザ・シーズ」の寄港も目指す。秋田港の改訂港湾計画にはそのための岸壁改良整備などを位置付けており、今回の補助金を活用して概略設計や地質調査などを実施する考えだ。
具体的には、セリオン前にある−4m岸壁と−5.5m岸壁を−11m岸壁として改良し、係船柱や防舷材を設置。また、秋田港の背後地にある多機能複合施設裏手の道路を拡幅し、同施設前の道路を緑地(1.5ha)や埠頭用地(1.2ha)にする。現在の中島埠頭(フェリーターミナルや現在のクルーズ船ターミナル寄港場がある箇所)で大型バスなどの駐車場が不足している現状を踏まえ、駐車場も整備したい考え。
これらの計画を盛り込み国に申請した「秋田港における大型クルーズ船受入による賑わい創出のための基盤整備検討調査」では、事業費5,000万円で岸壁の概略設計や地質調査のほか、臨港道路や公園、駐車場整備の測量、概略設計を実施。このうち国が2分の1となる2,500万円を補助する。
県は一連の整備により大型クルーズ船寄港の増加を図り、受け入れ環境の強化による観光消費の拡大や民間活動の活性化を目指す。県港湾空港課の菅原純課長は「計画をできるだけ早期に進め、秋田港周辺の活性化と県内全域への波及効果につなげたい」と話している。
提供:秋田建設工業新聞社