京浜臨海部再編整備協議会(神奈川県、横浜市、川崎市で構成)がまとめた立地企業の動向調査結果によると、設備投資を計画している事業所は全体の4割弱に上ることが明らかになった。業種別では、製造業の半数超(56%)、建設業と運輸業のそれぞれ約3割の事業所が計画している。投資の内容は設備の更新、施設の新・増設など。実施に際しては、川崎市内の2割、横浜市内の1割に当たる事業所が「用地不足」を課題として挙げている。また、行政に対しては、産業道路や国道409号の渋滞緩和や、横浜環状北西線・南線の早期開通などを要望していることが分かった。
動向調査は、土地利用状況や今後の事業展開などを探り、今後の取り組みの方向性を検討する際の材料として生かすために行ったもの。
対象は、横浜市神奈川区、鶴見区、そして川崎市川崎区のうち、産業道路より海側の区域(ヨコハマポートサイド地区を除く)他に立地する製造業や運輸業、建設業など821事業所。
各事業所には、▽現状(事務所の機能、設備投資計画など)▽土地利用の状況(遊休地や低未利用の有無、今後の用地取得予定など)▽今後の事業展開(新たな産業や分野への進出など)▽その他(公共インフラの整備や事業に対する希望)―などを尋ねた。この他、10事業所と5業界団体にはヒアリング調査を実施した。
調査結果によると、事業所施設・設備は老朽化が進んでいるのが分かる。建築年数は平均で29・1年。業種別では製造業が36・3年と全体平均を上回っており、建設業の30・5年、運輸業の23・4年と比べて古い事業所の割合が多い傾向にある。
事業所機能の今後については「現状維持」が最も多く、全体の74・3%を占めた。横浜市では8割を超える。これに対して川崎市は7割程度にとどまり、「現状機能の拡大」が25・7%に達した(横浜市は10・9%)。
今後の設備投資計画が「ある」としたのは全体の38・3%。業種別では製造業56%、建設業30・8%、運輸業28・9%となった。投資の具体的な内容は「設備更新」の57・5%が最多で、「設備の新・増設」30・7%、「施設の新・増設」14・5%、「施設建替」8・4%と続く。
設備投資上の課題や問題点を尋ねたところ、「特にない」が半数を占めたが、「用地不足」「資金不足」が一定程度見られた。このうち「用地不足」については、川崎19・5%、横浜10・9%と両市の間で開きがある。
○遊休地・低未利用地が増加傾向に
土地利用については、2018年度の遊休地・低未利用地が8件58・3fとなり、14年度に比べて件数、面積ともに若干増加していることが分かった。
また、調査では京浜臨海部に立地するメリットとデメリットを尋ねている。3割を超える事業者が「高速道路近接」「首都圏市場がある」「港湾近接」を挙げた。一方、デメリットは、「鉄道アクセスが悪い」「道路の混雑」など交通面が上位。この他、「人材が得にくい」や「災害発生時の被災リスクが高い」を挙げる事業所が2割を超えた。
公共インフラの整備や改善に対する要望は、「道路関連」が全体の4分の1、「鉄道関連」と「バス関連」がそれぞれ2割程度を占めた。具体的な内容としては、産業道路、国道409号線などの渋滞緩和、東扇島地区へのアクセス改善など。
京浜臨海部に関わる構想路線の一つ、東海道貨物支線貨客併用化については、実現した場合の利用意向が全体の3割弱となった。市別の利用意向は横浜市が21・7%、川崎市が29・1%。
提供:建通新聞社