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北海道建設新聞社
2019/04/08

【北海道】マルチテナント型物流施設 札幌市内で新設相次ぐ

 札幌市内でマルチテナント型物流施設の新設が相次いでいる。2018年に東区で大和ハウス工業(本社・大阪)、ことしに入り不動産サービス大手のCBRE(本社・東京)が清田区でそれぞれ建設。JR貨物(同)は、白石区のターミナル駅構内敷地で構想している。道内で賃貸の物流施設は少ないが、インターネット通販など電子商取引(eコマース)の拡大や、既存倉庫の老朽化などで今後、需要の高まりが見込まれる。
 マルチテナント型の物流施設は、複数の企業が利用できる倉庫の開発、管理・運営を事業者が一括して担い、テナントを募集して賃料を得る。施設は高層階で規模が大きいことが特徴だが、積雪寒冷地の道内は低層階とし、施設内で荷下ろしができるよう運送車を引き込む造りが多い。
 立地は幹線道路へのアクセス面だけではなく、人手不足に対応できるよう、近くに居住地があり、働き手を獲得しやすいエリアを好む傾向にある。
 住宅が立ち並ぶ東雁来地区に設けた大和ハウス工業の「DPL(ディープロジェクト・ロジスティクス)札幌東雁来」は、2階建て、延べ6万5653m²の規模。倉庫は8区画で構成し、約5000m²から約1万m²までを用意。5区画を貸し出している。
 1月に竣工したCBREの「札幌里塚物流センター」は、北広島ICや国道36号へのアクセスが良い清田区内に設けた。S造、4階、延べ2万6600m²の規模。倉庫は3ブロックに分かれ、賃料は共益費込みで1坪(約3・3m²)3500円程度に設定した。
 入居者はまだ決まっていないが、同社担当者は「2月に開いた見学会には40社以上が来場した」と話し、今後の契約に自信を見せる。運送会社を中心に引き合いが強いようだ。
 JR貨物は、札幌貨物ターミナル駅構内の遊休地約5万m²を活用した大型物流施設を構想。19年度の事業計画に、複数企業が入居するマルチテナント型物流施設「レールゲート」開発の可能性調査を盛り込んだ。敷地を民間に貸し出して開発するか、自社でするかを検討。事業者選定や施設概要といった方向性を月内にも決める考え。東京貨物ターミナル駅構内では延べ7万5800m²の広さを持つ「東京レールゲートWEST」の建設を進めていて、本道への広まりが期待される。
 道内では、自社利用を目的に大型物流施設を新たに設けるケースは多いが、マルチテナント型の供給はまだ少ない。CBREの担当者は「賃貸物件の事例が少ないため、投資に踏み切れないのでは」と指摘。それでも札幌市内では「床を必要とする企業は多い」とし、需要は高いとみている。
 日本不動産研究所北海道支社の担当者は、郊外の遊休地を利活用するため、投資物件として物流施設を設けたいという企業からの相談があると明かす。大谷地地区などは老朽化している既存施設が多いことから、「新しい施設に移りたいというニーズはある。あとは賃料との兼ね合い」と示唆。需要喚起には手頃感のある賃料設定が必要になるとみている。