富山県建築設計監理協同組合(藤井均理事長)と協力会員企業で構成する同組合共栄会(山崎義行会長)は19日、富山市の富山電気ビルで、研修・交流会を開催した。
これまで、両団体の代表者レベルを対象とした研修・交流会は開いてきたが、実務担当者でもより一層の交流、結びつきを深めようと初めて企画。約70人が参加した。
講演会は、「建築設計と構造デザイン」をテーマに、富山大学芸術文化学部の大氏正嗣教授が講師を務めた。建設省、設計事務所勤務を経て現在、大学教授を務めている大氏氏は、自身の経歴などを説明し、「自称、一人産官学と呼んでいる」と自己紹介。
まず、構造デザインの考え方について、「普通の建築に魔法をかけ、特別なものにできないか。戦術ではなく、戦略としての構造デザインを目指している」と述べ、「構造が楽しいと建築も楽しくなる。建築の単体では価値は難しい。中身とマッチすることが重要」と指摘した。
その上で、「どんな建築に価値があるかと考えると、生き延びた建物が良い建築。消費される建築もあるが、残したい建物を目指すべきではないか」と訴えかけた。
加えて、「長期存続が目標である、社会的な建築価値を継続的に認知させるため、構造デザインが見据えるべきは感情と知性。両者をバランスよく兼ね備えていることが重要」と強調した。
また、「建築空間には調和(安心)と緊張(刺激)を心理的に与える効果がある。構造デザインは単に驚きの演出のみでなく、むしろ安心を認識させることが必要」とし、「調和の中に緊張を埋め込み、トータルで建築の価値を向上させることが大事」と説いた。
その後、自身が全国各地で試みたプロジェクト、大学での研究成果などをスライド写真を交えて紹介。その中で、「立山連峰の景色をもっと主体的に利用できないか。河川が多い富山県は橋も多数ある。橋を立山連峰を望む景色と関連付けて、ビュースポット、山とともに映える風景の一部とすれば、別の価値を持たすことができる」と提言した。
一方、プロポーザルの審査委員を務めてきた経験を踏まえ、「富山の設計事務所の仕事はきっちりしている。その反面、雪が降る地域だからか、チャレンジが足りないように感じる」と大手事務所との差を指摘し、「プロポは、プレゼンの印象で決まる。自治体と建築家では建築に求める根本的な考え方が違うが、富山では、雪に対するデザインが重要になるのではないか」とアドバイスした。