神奈川県は2019年地価公示を公表した。県内の用途別平均変動率は住宅地がプラス0・3%(前年プラス0・1%)と2年連続して上昇、商業地はプラス2・4%(同プラス1・9%)、工業地がプラス2・1%(同プラ1・9%)。商業地は7年連続、工業地は6年連続でともに上昇し、いずれも上昇幅が拡大した。
このうち、住宅地では上昇率順で県内トップ10のうち、相模原市緑区の橋本駅周辺が5カ所を占めた。始発駅としての利便性や県中心部との価格差に加え、リニア中央新幹線事業の発展的期待感から大きく上昇した。商業地では、近隣で駅ビルや市街地再開発計画が進む横浜駅至近の地点(横浜市鶴屋町2ノ24ノ1)では、上昇率が15・2%とトップで、価格順でも1平方b当たりの価格は220万円と7位にランクインした。全体傾向としては、多様化や都心回帰の傾向が進み、住環境より利便性が選好される傾向が顕著となっている。
調査地点は、住宅地1343地点、商業地360地点、工業地72地点、その他12地点の合計1787地点。調査時点は1月1日。
=住宅地平均変動率、2年連続上昇 上昇幅拡大=
住宅地の平均変動率は2年連続の上昇となった。上昇・横ばいの占める割合も70・2%(同68・6%)と拡大。駅徒歩圏で利便性の良い住宅地の需要が堅調だが、敷地が広く総額が高額になりがちな地点の一部では高値警戒感から上昇幅が縮小している。
政令市別では前年同様、全てで平均変動率が上昇。横浜市全体の平均変動率はプラス1・0%と前年と同じ上昇率になった。東急田園都市線や東横線沿線など利便性の高い東部や中心地区の優良住宅地では、地価は上昇しているが、一方、西部や南部地区では上昇幅が縮小している。
=川崎市 相模原市平均変動率6年連続全区上昇 上昇幅も拡大=
川崎市はプラス1・7%(同1・4%)。JR南部線の利用や小田急線登戸駅の利便性向上などを要因に、上昇率が高まっている。また相模原市もプラス1・2%(同プラス0・8%)。特にリニア中央新幹線の新駅が整備予定の相模原市緑区の橋本駅周辺では、上昇率順で5地点がトップ10にランクイン。4位の「東橋本3ノ14ノ8」は前年12位、9位の「橋本8ノ10ノ1」は前年46位から上昇した。
政令市以外では、海老名市がプラス1%。大和市が1%未満の上昇。藤沢市は前年の横ばいから、茅ケ崎市と座間市は下落からそれぞれ上昇に転じた。一方、三浦半島や県西部では、横須賀市が2%以上、三浦市が4%以上、南足柄市、山北町、真鶴町では3%の下落となった。
=商業地平均変動率、高度商業地が上昇率押し上げ=
商業地の平均変動率は、2・4%(同1・9%)。上昇・横ばいの占める割合も88・1%(同86・2%)といずれも拡大した。横浜市では6年連続で全区上昇し、市全体で3・2%(同2・8%)と上昇幅が拡大した。特に再開発事業、低金利などに起因する不動産投資資金の流入や空室率の低下、賃料の上昇といった要因から、横浜駅周辺地区やみなとみらい21地区、市役所の移転先である関内北仲通地区といった市内中心地区で堅調となっている。
川崎市は7年連続で全区上昇した。市全体で4・8%(同3・9%)と上昇幅が拡大。特に川崎駅周辺地区では北口改札の開設などにより、空室率の低下や賃料の上昇基調で地価が上がっている。相模原市では4年連続で全区上昇。市全体で変動率が2・2%(同1・5%)上昇。区ごとに見ると緑区が3%以上、中央区と南区は1%以上の上昇幅となっている。
=工業地の平均変動率、道路インフラ整備や物流需要で地価上昇=
工業地の変動率は2・1%(同1・9%)と上昇幅もやや拡大した。さがみ縦貫道路の全線開通や関越自動車道、東北自動車道への接続の他、横浜北線の開通、横浜環状北西線などの開通期待などにより、周辺工業地の地価は堅調に推移。ネット通販関連の物流施設への需要も旺盛なことから、物流施設や倉庫の適地で地価の上昇傾向が見られる。
提供:建通新聞社