東京都建設局の設置した「葛西臨海水族園事業計画検討会」(座長・西源二郎東海大学客員教授)が3月4日、都庁内で第1回分科会を開き、建築や生物生態、水族園運営の視点から、新たな水族園の規模感やコストを見極める上で必要となる施設要件の素案作成作業を開始した。水族園は展示水槽があって成り立つ施設であり、展示水槽の水量や飼育する生き物によって必要性能が変わるため、まず展示内容から検討を進め、新たな理念にふさわしい展示・空間演出、展示水槽の構成などを素案としてまとめる。これを踏まえ、必要となる諸室や性能に関する素案を、次に来園者や管理運利者動線を考慮した配置イメージをそれぞれ作成する。この結果を基に第2回分科会を開き、最終的な施設の規模や性能、整備コストの算定方法などを固め、年内に最終意見をまとめる。
第1回分科会では、都が新たな展示構成・水量のイメージとして▽東京湾流域の生態系(水深1b程度、水量450d程度)▽東京湾の生態系(水深0・1〜2b程度、水量70d程度)▽温帯から亜熱帯の海の生態系(水深0・1〜4b程度、水量130d程度)▽サンゴ礁の生態系(水深3b程度、水量300〜500d程度)▽海と陸と空をつなぐ生き物(水深3b程度、水量500d程度)▽外洋の生態系(水深6b程度、水量3000d程度)▽深海の生態系(水深2b程度、水量40d程度)―を提示。分科会ではこれをベースとしつつ、展示内容を精査していくことにした。
施設性能については、「子供の背丈でも見えやすい水槽や車いす・ベビーカーなどで利用しやすい施設」「親子で体験できる設備・機能の確保、標本・映像・ICTなどの効果的な活用」「子どもの遊び場スペースの確保」「休憩所、レクチャールームなどの広いスペースは、多目的に利用できるような配置」「ラボや企画展ホールなどの新設」「ボランティアが活動しやすい控室の適正規模」を検討する。都では現段階で、無料休憩室の面積を400〜500平方b程度、レクチャールームを250〜300平方b程度、ラボ・企画展ホールを200〜250平方b、ボランティア控室を100〜150平方bと試算している。
また、メンテナンス機能の確保として、生き物の搬出入に支障がないよう来園者動線と管理運営動線を明確に分離する他、部分閉鎖により大規模改修が行えるよう将来の改修に対応しやすい配置を検討する。
環境負荷を低減するための取り組みでは、自然採光や建物緑化、太陽光発電設備、高効率の熱源機器・ポンプ、冷却水・逆洗水の再利用などに取り組む他、エネルギー消費量の管理システムの導入を検討し、部分的な大規模改修がしやすいように配置や設備系統を工夫する。
提供:建通新聞社