東京都入札監視委員会制度部会(部会長・小澤一雅東京大学大学院教授)が建設関連5団体と行っていた意見交換会が終了した。昨年6月から本格実施に移行した入札契約制度改革を巡って、業界団体が試行段階からの見直しについて一定の評価をする一方、都内中小企業を構成員とする共同企業体(JV)での入札参加に対する総合評価(落札)方式での加点の引き上げや、案件の拡大を求める声が上がった。建設業の働き方改革関連では、適切な工期設定と平準化をさらに推進するよう全団体が強く求めた。入契制度について都は、現段階で見直しを行うことはない考えを示したが、総合評価方式の取り扱いや平準化に向けた取り組みには、さらなる改善の検討が必要と言えそうだ。
予定価格については、試行段階では原則として全案件で事後公表とした。しかし、中小企業から積算の負担増を問題視する声が上がり、入札の不調が急増したことから、本格実施に当たり一定規模以下の案件を事前公表に戻した。これに対して、東京建設業協会(東建)と東京都中小建設業協会(都中建)が「予定価格事前公表案件の拡大」を要望。一方、東京電業協会は「全て事後公表」とするよう求めた。
都は本格実施に移行後、不調の改善など一定の効果が現れていること、本格実施から半年程度しか経過していないことから「現段階で見直しは考えていない」とし、引き続き入札参加や応札、落札などの検証作業を進めていく方針を示した。
混合入札での、都内中小企業を構成員とするJV結成に関しては、東建が「総合評価方式での加点引き上げ」、都中建が「一定規模以上の案件でのJV結成義務化」、東京電業協会が「加点引き上げと総合評価方式の案件拡大」、東京空調衛生工業会が「総合評価方式の案件拡大」を求めた。
都は都内中小を構成員とするJVについて、「単独項目で加点するとともに加点幅を引き上げた」として、こちらも現段階で見直しの予定はないとした。ただ、団体からは「加点がインセンティブにつながっていない」「総合評価方式の案件が限られている」との指摘があった。また、都内中小とのJV結成を入札参加条件としたモデル工事も案件が限られていることから、中小企業の受注機会確保や技術力向上につなげるためには、総合評価方式の取り扱いについてさらなる改善の必要がありそうだ。
働き方改革の推進では、「適切な工期設定」「計画的な発注、施工時期などの平準化」を、東京空調衛生工業会を含めた全5団体が強く求めた。
都は債務負担の活用などこれまでの取り組みを継続しつつ、工事の稼働状況を評価する新たな指標として、国土交通省が採用している「平準化率」を新たに導入し、全庁で目標値を設定すると説明、平準化をさらに推進する方針を示した。技術者・技能者が慢性的に不足している現状で、建設業界の休日の確保や長時間労働の削減、計画的な受注・入札参加などにつなげるためには、各局が目標達成に向けて実効性のある施策を打ち出すことが重要になりそうだ。
提供:建通新聞社