産学官連携実務者フォーラムが初めて開催長大・松田教授やツタトボ片山会長らが講義 大量のインフラが一気に老朽化する中、限られた人員・コストで適切な維持・管理が求められている。この社会要請に対応することを目指した『産学官連携インフラメンテナンス実務者フォーラム』が初めて開催される。きょうから二日間にわたって福岡で行われる。初日の講義では、長崎大学の松田浩教授や(一社)ツタワルドボクの片山英資会長らが講師を担当する。
同フォーラムは、九州地方整備局とインフラメンテナンス国民会議九州フォーラムが共催。九州フォーラムは、インフラメンテ国民会議の趣旨である産学官民の技術や知恵を総動員し、インフラを良好な状態で持続的に活用することを目指したプラットフォーム≠ニしての取り組みを、九州地区で加速するため昨年夏に始動した。
両者が共催して初めて開く今回のフォーラムには、九州地方整備局から8人、自治体から9人、民間企業から10人、大学から3人が参加。九州地方整備局会議室を会場とした初日(6日)には、産・学・官の職員が、インフラメンテナンスに係わるさまざまな課題やそれぞれの役割を共有し、課題解決に向けてグループ討議・意見交換する。
まず、▽九州地整企画部の堀康雄事業調整官が「インフラの現状」▽ツタワルドボクの片山会長が「伝える努力〜技術と広報は維持管理時代の両輪〜」▽長崎大学の松田教授が「インフラにおける学の役割」―をテーマにそれぞれ講義。その後、「今後の道路構造物のインフラメンテナンスについての関わり方」と「産学官連携によるインフラメンテの仕組みづくり」について、グループで討議する。
久留米市の九州技術事務所に会場を移した二日目には、橋梁実モデルを活用。講義と実技を組み合わせた橋梁のメンテナンスに関する技術・専門力の向上を目指す。
橋梁実モデルで点検実験、インフラ維持の課題共有 インフラ維持管理に関する課題の共有、解決を目指した「産学官連携インフラメンテナンス実務者フォーラム」が6、7日の2日間にわたり開催された。7日は、九州技術事務所(久留米市)を会場に橋梁実モデルを使った点検の実技や講義などが実施。自治体や企業の技術者、大学生らが参加し、インフラメンテナンスへの理解を深めた。
講義では九州技術事務所総括技術情報管理官の野尻浩人氏が、コンクリート橋の点検技術について説明。ひび割れの原因を特定するために着眼する主な項目として、ひびの場所、向き、分散性を挙げた。原因の特定には「あらゆる可能性を根拠なく排除しない」と強調した。その後の実技では、橋梁実モデルの主桁に入った幅5_、長さ1・1bのひび割れを参加者が目視で診断。原因などを推定した。
九州地方整備局道路保全企画官の浅井博海氏は、全国の道路や橋梁の点検・修繕状況などを報告した。自治体に対する支援策として、技術的な相談窓口や事業費の補助制度も紹介した。
AI(人工知能)を活用した橋梁点検については、山口大学の中村秀明教授が講義。AIの推定精度を上げるには、AIに学習させるための画像データをより多く集める必要があると話した。
閉会にあたり、野尻氏があいさつ。「今後10年から20年で多くの橋梁が施工から50年を越え、問題が顕在化する。産学官の技術者が一丸となって、インフラの問題に対応しなければならない」と話し、さらなる連携の必要性を説いた。