住宅の地域に対する開放性(公共性)をどう考えるか。設計する立場からお2人に聞いた。
小笠原弘建築計画(福井市中央1丁目)の第5回ふくい建築賞優秀賞『icosagon』が、住宅の公共性について考える、いい契機となっている。
審査委員長を務めた森俊偉氏は、街なかの住宅地にあって「閉鎖的だが内開外閉のシステムを踏襲し、完成度の高いミクロコスモス空間を生み出している」と高く評価する。
当の小笠原代表は「icosagonは地域に閉じたが基本的な考え方としてはケース・バイ・ケース。郊外緑地で隣家と相当に隔たりがあるならば開放すべき」と指摘。全閉じに挑戦したicosagonについて「開閉の本質は?かねてから考え、今回は勇気をふり絞って臨んだ。もちろん施主が十分に理解し選択した。建築家は提案まで。建築は閉じてても、心は閉じず、開放的であればいい」などと力説。住宅が持つ社会性に十分配慮しての試みだ。
一級建築士事務所山田屋(福井市渕2丁目)の山田健太郎代表は、住宅の地域に対する開放性について、敷地前面のカーポート(車庫・ガレージ)に着眼し「はからずも、その存在が開放性を左右し、まち並みをも形成する」と指摘する。車社会がもたらした結果でもあり「平成という時代らしさでは」とも。
そこで氏は、積極的にカーポートを捉え「高さを整えるなど、街並みに統一感を生み出す有効な装置として考えてみては」と提案。また、柔軟性あふれる空間の形成へ、例えば「カーポートでバーベキューを楽しみ、被災時には一時しのぎに活用も」と。単機能で殺風景な空間も、考え方次第という。実は、地域コミュニティの在り方に深く関わるカーポートで「可能性を引き出すためにも都市計画を考える建築家が必要。新しい価値観を醸成していくことが大切」などと指摘した。