市場再整備に民間活力導入(PFI)へ―。金沢市はこのほど開かれた卸売市場の今後のあり方検討会(座長/水野一郎金沢工業大学教授)の第4回会合で、中央卸売市場の再整備に向けたPFI事業導入の可能性調査に乗り出した。
金沢市西念にある中央卸売市場は1966(昭和41)年に開設。敷地面積は8万6116平方メートルで、全国の青果・水産物がある31の中央卸売市場の中で27番目の広さとなる。
主要施設は本館卸売場(66年築、延べ7688平方メートル)、第2卸売場(77年築、4848平方メートル)、第3卸売場(85年築、2757平方メートル)、仲卸売場(66年築、1万230平方メートル)で、このほか冷蔵庫棟や青果低温貯蔵庫、クリーンセンター、青果配送センターも備える。
民間事業者でも開設できる卸売市場法の改正や既存施設の老朽化を踏まえ、市は昨年7月から中央卸売市場と公設花き地方卸売市場の今後のあり方について検討を進めている。
PFIの可能性調査は、中央卸売市場の再整備にかかる概算事業費や事業規模などが市のPFI事業検討基準を満たすことから必要なもので、市は会合でPFI事業のスキーム例や特徴、方式・類型を説明し、他都市の導入事例も紹介した。
市場再整備のPFIの特徴では、開設者は公共団体(市)のままで、施設建設や市場運営をPFI事業者(SPC=特定目的会社)が行う。SPCは施設建設や市場運営、維持管理、ファイナンスなどにそれぞれノウハウのある事業者が集まって結成されるが、市場関係事業者が関与しないSPCも可能である。経済的メリットを求めて実施されるので、建設費や運営費総額が公共団体による直営事業よりも安価になるほか、民間事業者が運営する収益施設を併設することで、より公共の負担が少なくなる可能性があるという。
サービス購入型PFIのスキーム例では、SPCから出資を受けたPFI事業者が施設建設や維持管理、修繕などを卸会社や仲卸会社などの利用者に提供。利用者は開設者に使用料を支払う仕組みとなる。
事業方式は「BTO」「BOT」「BOO」「RO」の主に4方式あり、事業類型は「サービス購入型」のほか、SPCに運営権を設定し、利用者がサービス対価を支払う「独立採算型」とこれらの「混合型」がある。
他都市の事例では、神戸市中央卸売市場本場(再整備)のPFI事業を紹介。PFI導入の背景には、1995(平成7)年の阪神淡路大震災による復旧・復興に多額の費用負担が発生し、従来手法での事業実施は財政的に困難な状況であったことなどがある。
神戸市のPFIでは事業者が施設の設計・工事管理を行い、完成後、市に施設を引き渡した上で事業期間を通して施設の維持管理運営を行うBTO方式が採用された。事業者はマーケットピア神戸(SPC)で、出資企業は三菱UFJリース(代表)、三菱重工業、近畿菱重興産(以上、建設)、日本管財(維持管理・運営)。
事業効果には、設計・建設の「一括発注」「性能発注」による建設コストの削減や維持管理業務の経費縮減といったコストメリット、市場PR事業など市の業務が軽減したことなどが挙がる。
市は中央卸売市場の再整備に向けた立地場所について、2月14日に開く第5回会合で骨子案を提示する。委員からは賑わい創出の観点から、金沢駅から近い現在地での建て替えを望む声もあるが果たして―。PFI導入の議論とともに、今後の動向が気になるところである。