北海道建設新聞社
2019/01/29
【北海道】魅力的な民泊をリノベで 札幌の企業が提案、地域配慮も
TAKE(本社・札幌、テイク)は、一級建築士事務所と不動産会社の経験・知識を融合し、地域に配慮した民泊事業を展開している。札幌市内を中心に110物件ほどを手掛け、直営と、建物オーナーからの委託を受けて高い利回りで運営するのが半数ずつ。限られた予算の中で最大限の魅力を生み出すリノベーション力に強みを持ち、日常では味わえない特別な空間を設けてゲストをもてなす。一方で、民泊を長く続けるために近隣住民への気配りを徹底。今後は地域の建設会社やデベロッパーと連携し、オーナーを掘り起こしながら民泊施設の新築や改装を促したい考えだ。
2011年6月に設立。武山真路会長は大手不動産賃貸会社のリフォーム部門を長く務め、費用対効果のあるリノベーションで物件の高収益化を得意としていた。そうした経験と一級建築士事務所としての技術力で、高利回りの民泊運営を賃貸物件のオーナーらに提案している。
「おもてなしの心」を理念としている。民泊化に向けて物件をリフォームする際は、ホテルと住居を掛け合わせた空間になるよう配慮する。
民泊を利用する外国人旅行者は8―10人の家族連れが多く、一家団らんの時間を大切にする。シティーホテルの場合、1部屋当たりの収容人数は4―5人が限界。家族が別の部屋に分かれるため、団らんの機会は食事の際などに限られてしまう。
TAKEが用意する民泊施設はパブリックスペースを完備し、家族連れが和気あいあいと過ごせるよう工夫。部屋のクオリティーは高級ホテルとシティーホテルの中間を目指し、奇をてらった非日常ではなく、旅行者にとっての特別な空間となるよう心掛けている。
ソフト面にも徹底的にこだわっている。直営の送迎チームを設け、宿泊者を最寄りの駅まで送り迎え。到着後に30分程度、日本の法律や注意事項などをレクチャーし、近隣住民とトラブルにならないよう注意を促す。
フリーチェックイン&アウトの非対面方式を採る民泊施設が多い中、同社は顔の見える運営を心掛け、民泊施設として長く営業できるよう細心の注意を払っている。
地域住民への配慮に余念が無い。民泊施設のオープンに当たり、営業開始の2カ月前にスタッフが近隣の住民や町内会長へあいさつ。オープン10日前、さらにオープン10日後、半年後と近隣住民をケアして回る。そうすることで民泊への理解を深めてもらい、地域の異色施設とならないよう促す。
町内会のごみステーションを、あえて民泊施設のそばに設けてもらうよう調整する。民泊施設から出るごみは産業廃棄物のため、宿泊者は地域のごみステーションを使うことができない。それでも「家のそばにごみステーションができるのは誰でも嫌。そうした地域の困り事を民泊施設が請け負うことで、無くてはならない存在として町内会で定着させる」(武山会長)という。
利回りに悩む賃貸オーナーの起死回生策として、民泊へのシフトによる物件価値の向上を提案している。今後は地域の建設会社やデベロッパーと手を組み、建物オーナーを考えている人への新築提案も強めたい意向だ。民泊事業の運営を前提とした住宅購入ローンの取り扱いを始めている金融機関もあり、新築物件は追い風にあるという。
武山会長は「民泊施設はJRや地下鉄とのアクセスが関係し、札幌圏は好立地な物件ほど人気が高い。地方は直営の送迎や清掃チームが対応できないので、ノウハウ提供によるフランチャイズ展開を考えている。建設業界でタッグを組めるところがあれば」と話している。