日本工業経済新聞社(茨城)
2019/01/16
【茨城】水戸市の新斎場基本計画素案/37億円、火葬炉4基
水戸市は下入野町に整備する新しい斎場の基本計画の素案をまとめた。施設は約4000u規模。火葬炉4基(ほかに1基分の予備スペース)、告別室、炉前ホール、収骨室、待合ホール、待合室、式場、駐車場、緑地などを整備する。規模や配置などは今後の基本設計で決定する。事業手法は、市が整備して運営する従来方式(公設公営方式)やPFI方式などを比較検討した結果、従来方式とした。従来方式による整備事業費(設計監理、工事費、備品など)は37億7700万円。2019年度には基本・実施設計に着手して20年度まで行い、21年度から23年度まで建設工事を進め、整備完了後、速やかに供用開始させる。
基本計画素案に対しては2月6日まで意見を募っている。基本計画の策定は褐嚼ン技術研究所(東京都)が担当し、作業を行っている。そのほか本年度は環境影響調査を潟jュージェック茨城事務所(水戸市)が実施している。
基本計画素案によると、新斎場は下入野町で建設を進めている新ごみ処理施設の西側(市有地)に建設する。想定敷地規模は約2万5000u(市街化調整区域)。粗造成は終了している。新ごみ処理施設の整備に伴って主要幹線道路からのアクセス道路、電気、水道が整備され、汚水は近隣の農業集落排水への接続が可能であることから建設地に決定した。
施設規模は約4000u。火葬部門、待合部門、式場部門、外構を整備する。
火葬部門では火葬炉を4基整備するが、将来の火葬増加や火葬炉改修などに対応するため1基分の予備スペースを確保する。火葬炉設備には排ガス処理設備を設置し環境保全に配慮する。火葬部門ではそのほか、告別室、炉前ホール、収骨室を同一室で使用できるように整備する。
待合部門では、落ち着きのある待合ホールを設置。待合室は将来の火葬炉5基体制でも対応できるよう洋室5室の整備を基本とし、可動式間仕切りなどで弾力的な運用ができる形態とする。
式場は、現在の斎場で利用ニーズが高い80人程度と160人程度が収容可能な2式場を整備する。式場に近い位置には遺族・司祭者控室も整備する。
外構については、駐車場の必要台数は来場者用240台程度、身障者等用4台程度、マイクロバス用5台程度。敷地内には緩衝緑地を設けて花木を植栽し、周辺環境との調和がとれた緑地を整備する。
そのほか施設の耐震性の確保や非常用発電機の設置などで業務継続性を確保。ユニバーサルデザインの理念により洋式の待合室やトイレの整備、施設内のバリアフリー化を図る。維持管理のしやすさや将来の火葬炉増設や修繕を見据え経済性を考慮した建物構造や設備とする。
市では1977年(昭和52年)に市営斎場(堀町2106―2)を建設。火葬炉や式場などの増設を行い、現在は火葬炉8基、式場3室、待合室10室を備えている。また内原地区の火葬業務は笠間地方広域事務組合が運営する笠間広域斎場やすらぎの森(笠間市笠間4669)で行っているが、将来の火葬需要の増加に備え新斎場を整備することにした。
事業手法は公設公営で
市では新斎場の事業手法について、市が整備して市が運営する公設公営方式(従来方式)のほかに、民間の資金やノウハウを活用するPFI手法について市場調査を実施した。PFI手法は、市が整備して民間が運営する「公設民営方式(DBO方式)」、民間が整備して民間が運営する「民設民営方式(BTO方式)」について調査。
市場調査では、斎場のPFI手法に参画した実績がある建設企業9者、維持管理企業4者、火葬炉メーカー4者の合計17者から回答を得た。
その結果、算出した事業費は、施設整備費は従来方式が少し高くなったが、事業期間15年間の運営・維持管理費やその他経費を加えた総額では従来方式約58億円、DBO方式約57億円、BTO方式約61億円となった。
DBO方式とBTO方式のVFM(Value For Money、W)を従来型の公設公営方式と比べると、DBO方式は財政負担が軽減され、BTO方式は削減効果が見込めなかった。
さらにDBO方式であっても、火葬炉4基を想定する新斎場は比較的小規模で、一括発注による建設コストの削減範囲が小さくなることを確認した。
新斎場は多様化する葬送習慣を的確にとらえ時代に即した対応が求められることから、設計や建設、運営、維持管理の各段階で市の意向を十分に反映し事業を進めていく必要があると判断し、市が設計や工事、維持管理を委託や請負で発注する公設公営方式(従来方式)で行うことを基本とした。ただし運営については、より効率的で効果的な手法を採用する。
市場調査によると、事業費に対する回答のうち、建設費など(設計・監理、工事、什器・備品)の加重平均は35億5685万円、運営・維持管理費の加重平均は1億1685万円だった。設計期間は15カ月という回答が最も多く、建設期間は17カ月が最も多かった。事業への参加意向については、17者のうち参加したいが8者、参加は難しいが5者、現時点では判断できないが4者だった。
新斎場の民間活力導入可能性調査業務は、新斎場整備基本計画策定業務と共に褐嚼ン技術研究所(東京都)に委託している。
W VFM(Value For Money) 事業手法のコスト比較に用いる。事業期間全体にわたり「一定のコストの下で、より高い水準のサービスを提供できる」または「同一水準のサービスを、より低いコストで提供できる」ことが見込まれる場合、民間活力の導入による事業手法が有利と考えられる。